Chop Suey
Wikipedia で American cuisine のカテゴリに入る項目の一覧を眺めていたら、ふと目にとまった項目がありました。American chop suey と言う項目です。チャプスイという料理は日本で食べたことがないのですが、単語だけは聞いたことがあります。確か「美味しんぼ」で見たような気が・・・と思ってちょっと調べてみたら第2巻にありました。なつかしい・・・
東西新聞の文化部一行が横浜中華街を訪れたときのこと。女性陣がガイドブックで調べた有名店へ。山岡は思いっきり気乗りしていなかったが、散々並んでいやいやながら店内へ。そこで
店員:あんたたちあっちのテーブルねっ。早く席についてよ。忙しいんだからッ!
と横柄な店員。カウンターの向こう側には腕を組んで威張りきった態度の男。店主か。料理が出てきて、
山岡:取り皿が足りないんだけど・・・。
店員:うちはみんな一人一枚でやってもらうことになってますから。
山岡:ゴマソースの物もチリソースの物も同じ皿で取れって言うのか!!無視する店員。
家族連れの客:チャプスイメンと五目ソバとわんたんめんと・・・、
店員:メン類はバラバラに注文しないで。
家族連れの客:え?と言いますと・・・。
店員:メン類は安いんだから何種類も注文されると面倒なの。1グループ1種類にしてくれないと受けられないわけ。その家族連れは仕方なく五目ソバを四つ注文。それを聞いていた山岡がキレる。
山岡:行こう、出るんだ!!
ゆう子:え?
花村:出るって・・・。
田畑:まだ、何も食べてないわ。
山岡:こんな店では何も食べちゃいけない。美味いとかまずいとかという以前の問題だ。マスコミに取り上げられたくらいでいい気になって、客を粗末にするような人間の作るものは、食べる価値がない!!
実はこのチャプスイメン、筆者は今日の今日までどんなものか知らずにいました。ウィキペディアで調べると実にまあ色々なことが書いてあります。
チャプスイ(広東語 雜碎、英語 chop suey)は、アメリカ式中華料理のひとつ。
広東料理の炒雜碎(チャーウチャプスイ)がもとになった料理で、豚肉、鶏肉、タマネギ、シイタケ、モヤシなどを炒め、そこにスープを加えて煮た後に、水溶き片栗粉でとろみをつけたもの。独特の材料として、トマトやハムが入る事もある。そのまま食べるほかに、白飯や中華麺にかけて食べる。 ほぼ八宝菜に似た料理であるが、店や地域によって相当な違いがある。
具体的にどんな料理なのか、クックパッドでレシピを調べてみたら、こんなのがありました。
投稿者自ら「米国育ちの中華料理です。『中華丼とどこが違うの?』と訊かれると辛いのですが、在り合わせの野菜で簡単に出来る速攻メニュー」と書いてありますが、まさに中華丼です。敢えて違いを見出そうとすれば、中華丼と違ってうずらの卵やベビーコーンが入らないところや、逆に中華丼なら醤油が前面に出ないところでしょうか。え? それじゃ八宝菜? ウィキペディアに書いてある通りですね。または、炒め煮にしてトロミをつけた野菜炒めと言えばだいたいアタリだと思いますが、だとすれば、とりたててこのようなレシピを見たわけではないのに、日本では日常的に作ってました。なるほどあれがチャプスイか。そしてそれをご飯か麺にかけるわけですね。確かに中華丼とか野菜あんかけそばみたいなモンになりますね。きっとチャプスイメンとはそんなようなものなのでしょう。でも五目あんかけとの違いが分からない・・・ 実際の上の店では双方のメニューがあるようですが・・・
ところでこのチャプスイ、起源についてはいくつか説があるようですが、アメリカ生まれということは確かなようです。
銀座アスターのHP によると、銀座アスターの開業当時の名物料理はこのチャプスイで、「アメリカの中国料理」と書かれています。そして「インテリアもサービスも、斬新なアメリカン・スタイルを標榜」していたとのことで、これは創業者がアメリカに造詣が深かったことによるようです。銀座アスターがアメリカ志向の中華料理店だったとは知りませんでした。
そこで今度は英語版 Wikipedia で見てみると、
Chop suey (Chinese 'mixed pieces') is an American-Chinese dish consisting of meats (often chicken, beef, shrimp or pork), cooked quickly with vegetables such as bean sprouts, cabbage, and celery and bound in a starch-thickened sauce. It is typically served with rice but can become the Chinese-American form of chow mein with the addition of deep-fried noodles.
だいたい日本語版と同じですが、使う材料が微妙に違ったり、英語版では炒麺が出てきます。また英語版には "Chop suey is part of American Chinese cuisine" と書いてあります。起源についても触れられていますが、日本語版よりもかなり多くの説が掲載されています。
出来上がりの写真は、こんな感じで、だいたい日本バージョンと同じと思ってよいでしょう。
具体的なレシピを見てみましょう。日本のクックパッドのようなサイトに allrecipes というのがあり、筆者も良く参考にしていますが、その中にこんなレシピがありました。
日本には豚コマがあるけれどもこちらにはないとか、その他食材の availability の差が反映されていますが、基本線は日本バージョンと同じです。読者のレビューがあるのもクックパッドと同じですが、その中に
I was looking for my moms chop suey recipe, and couldn't find it. I looked on here, and this is the same one! It's delicious! I did use a can of chicken soup stock along with the water though, and added more ground pork.
というようなコメントがあって面白いです。「いつもお母さんが作ってくれて好きだったのに、どうしてもレシピが見つからなくて作れずにいたけど、やっと見つけた! まさにこれです!」てなところですね。いつも作ってくれたお母さん・・て中華系の家族なのでしょうか。
さて、この chop suey、Wikipedia にある通り、"American Chinese cuisine" です。アメリカ風中華料理というべきか、中華風アメリカ料理と言うべきか・・・ California roll はアメリカ風日本料理というべきか、日本風アメリカ料理と言うべきか・・・? まあとにかく chop suey 自体、"American Chinse cuisine" なわけです。そこで冒頭に戻るワケですが、では、"American chop suey" とは何ぞや?
アメリカで生まれた chop suey をいったん第三国に輸出し、それをまた逆輸入して再度「アメリカ風」にアレンジしたもの? 第三国と書いたのは、アメリカおよび中国以外という意味です。中国がこんな「なんちゃって中華料理」を輸入するはずがないと思ったからです。で、ものはついでに Wikipedia の中文バージョンを見ると、「雜碎(chop suey)是盛行於美國和加拿大的美式中菜,・・・」となっていて、とにかく「美式中菜」(アメリカ式中華料理)と認識されているようです。
Chop suey は南米でもポピュラーらしく、チリ在住のとある日本人のブログによると、「チリでは中華といえばチャプスイが King Of 中華。デファクト・スタンダード」で、「旅行者の諸氏は、迷ったらまず中華系レストランに赴き、自然な動作と作法で「ケーロ・チャプスイ!」と注文すれば、擬似中華の素敵なワンダーランドが机上に大展開!」なのだそうです。でもこれは別にチリが第三国として有力であるという話ではありません。当然日本でもありません。というより、輸出して逆輸入という仮説がナンセンスです。ではその American chop suey を Wikipedia で見てみましょう。
American Chop Suey (also American Goulash, Chili-Macaroni, Chili-Mac, Mac 'n Beef, Macaroni and Beef, or simply Macaroni) is an American pasta dish. The preferred name and recipe varies by region, for example, the name American chop suey is most prevalent in New England. Commercial preparations of this dish are commonly marketed as Macaroni and Beef.
Classic American chop suey consists of elbow macaroni and bits of cooked ground beef with sautéed onions and green peppers in a thick tomato-based sauce. Though this decidedly American comfort food is clearly influenced by Italian-American cuisine, it is known as a chop suey because it is a sometimes-haphazard hodgepodge of meat and vegetables.
・・・。なんと言うか・・・ 日本で言えばマカロニミートソースですな、これは。本文中にもちゃんと Italian-American cuisine と書いてあります。味付け次第では、やはり本文にありますが、Chili-Mac でもありますし Mac'n Beef でもあります。Mac'n Cheese のチーズ抜きとも言えます。
そしてこれが chop suey と呼ばれる理由は、肉と野菜のごった煮である点が共通しているからとのこと。
本文中にある Goulash も気になったので見てみました。元はハンガリー料理で、"usually made of beef, red onions, vegetables spices and ground paprika powder" だそうです。この記載はミートソースのようにも解釈できますが、実際は挽き肉のソースではなくブツ切り肉のシチューという感じです。それがアメリカに来ると上で書いたようなものに変形していて、元のハンガリー料理とはかなり違うものになっているとのことです。
ではその American Chop Suey のレシピの例を、allrecipes から見てみましょう。
予想はしていたものの、馬鹿馬鹿しいと言うか何と言うか・・・ スパゲティミートソースそのものです。でもここで言っているスパゲティとは、あの細長いスパゲティ(太さ2mm弱)のことではなく、多分 elbow macaroni のことでしょう。だって缶詰ですから。
アメリカにはイタリアンレストランは実に多いのに、Italian cuisine に関しては相当アバウトです。細長いパスタは本来太さによって、スパゲトーニ、スパゲティ、スパゲティーニ、フェデリーニ、ヴェルミチェッリまたはカペッリーニと呼び分けるのに、アメリカでは一括して、しかもマカロニまで含めてスパゲティと呼ぶことがあります。ゆで方にしてもアルデンテという概念はないに等しいようです。だって缶詰ですから・・・
余談ですが。こちらでは有名なイタリアンレストランですら、アルデンテのパスタにお目にかかることは極めて稀です。これは日本人からすると実に驚くことなのですが本当です。「アルデンテで」とオーダーしても over cooked のパスタが出てくるか、そもそも通じないことすらあるようです。
日本人が拘りすぎなのでしょうか。1億総グルメ状態なのでしょうか。本場イタリアではどうなんでしょうか?
ではイタリアで食べたパスタはどうだったか・・・と思い出そうとしましたが、思い出せません。イタリアではパスタは antipasto と primo の間に食べるものなのですが、本当にそこでパスタを食べてしまうと primo に進めなくなってしまうので、いつも省略していたのでした・・・
今度 Maestro にでも行って敢えて試してみようかな・・・
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