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2008年7月

2008年7月30日 (水)

Five - second rule

5秒ルール。学生の頃、日本で流行ったのを覚えています。食べ物を落としても5秒以内に拾えば食べても平気というルールです。ルールというか、言い訳というか、根拠のない「安全圏」の目安でした。まあいくら5秒以内でも、落とした場所によってはルールの適用を考える余地のない場合も多いでしょう。例えば自宅の食卓の上ならまあ5秒でも10秒でもいいかもしれませんが、泥道の上じゃあ考慮の余地はありません。また、落としたものにもよるでしょう。ソースの絡まったステーキ片とせんべいでは大分話は違うでしょう。表面がどれだけ湿っているか、あるいは表面がどれだけデコボコしているかというのも、ルール適用を考える条件です。

この5秒ルール、アメリカにもあることを昨日始めて知りました。内容は全く同じです。5秒以内ならバクテリアがコンタミしないという話です。Wikipedia によると、Univ of Illinois の調査では、男性の56%、女性の70%がこの話を知っていることが判明したそうで、「アメリカにもある話」というより「アメリカでも有名な話」と言えそうです。・・・そもそも Wikipedia に掲載されていること自体が驚きですが、他の言語へのリンクを見ると、日米のほか、スペイン語圏、ポーランド、ロシア、北欧、中国等でもある話のようで、それはそれでまた驚きです。こんなくだらない話は日本だけかと思っていたのですが、うーん、どこの発祥なんでしょうか。

さてこちらで昨日から始まった Food Detective という番組で、Ted Allen がこの five-second rule は本当に正しいのか? と言うテーマを取り上げていました。そして、実際に実験をしていました。3つの食品を、いろいろな場所に5秒置いて、付着した細菌を培養してその汚染度を見るというものです。3つの食品は、1)ジェリービーンズ、2)フレンチフライ、3)シュリンプカクテル でした。また暴露する場所は、オフィスの机の上、地面など。もちろんネガティブコントロールとして、どこにも暴露しないというオプションも設定してあります。

結果。ジェリービーンズは机の上に暴露しても殆ど変わらないが、フレンチフライは机より地面の方が圧倒的に汚染されており、シュリンプカクテルはネガティブコントロールより机に暴露した方が寧ろ汚染度が低かった---

ちょっと正確に覚えていないのですが、概ねこんなような結果だったと思います。
ジェリービーンズのように表面が乾いていて滑らかな食品は、雑菌を拾いにくいのは容易に想像できます。フレンチフライは、もしもそれが比較的揚げたてだったのなら、かなり無菌に近い状態だったでしょうから、何かに暴露すれば必ず汚染度が増すはずで、これもほぼ当然と言えます。シュリンプカクテルは、汚染度が下がったわけではなく、もともとそれなりの数のバクテリアが付着していたということで、これも当然でしょう。

だいたい家庭用の洗剤でいくら手を念入りに洗ったところで、その手のスメアを培養すれば雑菌が沢山検出されるわけです。シュリンプは海で取れたあと滅菌という工程を経ることはなく、最初からバクテリアが付着しているし、カクテルになるまでの間に人間の手に触れられているので、汚染されているに決まっています。問題は、付着しているバクテリアが何で、どのくらいの数かということでしょう。確か日本の食品衛生法では一般細菌は 10000個/g 以下、E.coli などは検出されてはいけないことになっていたように記憶しています。

実験室など特殊な環境を除けば、オープンエアになっている場所では必ず落下細菌がコンタミしますので、全ての食品は必ず汚染された状態で口に入るわけです。それが許容範囲なら問題ないという話に過ぎません。ということで、5秒ルール、学生の頃からくだらないと思っていましたが、ついそのおかしさに惹かれて何度「適用」したことでしょう。

さきほど改めて日本のウィキペディアを見てみたら、3秒ルール、10秒ルールなどのバリエーションがあり、3秒ルールについては「1秒目でばい菌が食べ物を発見し、2秒目で片手をかけ、3秒目で両手をかけて(食品にくっついて)しまうため」という「根拠」まであると聞いて驚きました。

くだらないことを、それらしく理論づけてよりくだらなくするのは大学生(?)の好きそうな話です。

昨日の番組では、激辛のトウガラシ(ハバネロ)を食べて口の中が火事になった場合に、それを「消火」するのに何を用いると良いかという実験もしていました。まず5人の被験者がハバネロ入りサルサを食べて、口の中を火事にします。そのときの「辛くて涙目」度を5とします。画面ではカプサイシンが味蕾にとりついて爆発を起こしている状態が示されます。ここから、Ted Allen の指示でいろいろなものを口に入れてその後の「辛くて涙目」度を測定し、同時に味蕾の状態も推測します。

まず水。度数は減りません。味蕾にとりついたカプサイシンは一旦洗い流されても別の味蕾にとりついてしまうようです。
次に Coke。度数6。却って悪化します。炭酸が味蕾を却って刺激してしまうようです。
次にビール。Coke と同様です。
次にパン。度数4。度数が少し下がりました。パンが味蕾に付着したカプサイシンを取り去るようです。
最後にミルク。度数は3とかなり改善しました。ミルク中のカゼインのカプサイシンとの親和性は、味蕾とカプサイシンのそれよりも高いため、味蕾に付着しているカプサイシンを効果的に除去するという話です。
うーむ。本当だろうか? 分からない話ではないけれども、最後のカゼインの話は、結合定数などをちゃんと計測できれば面白い話ではあるけれども・・・

昔、試みにクサヤを食べた後、口の中を何で洗おうか考えて、水? ビール? !! ミルクだ!と思いついて結構効果的だったのを思い出しました。カプサイシンにも効果的なのか・・・
インド料理で食後にチャイを飲みますが、なるほど意味がある・・・のでしょうか。
スシのアガリに濃厚な粉茶を飲むのとは意味が違うようですね。

その昔、激辛カレーが流行りましたが、渋谷で20倍カレーにチャレンジしたときのこと。カレーそのものは食べられたのですが、食べ終わる前に間違ってつまんだグリーンペパーが大失敗でした。小さなグリーンペパーでしたが、これを口に入れても別段どうということはありませんでした。が、それを噛み潰した途端、中から超超超超辛くてちょっと酸っぱい液が口の中一杯に広がって、これは辛いというより痛て~~~!という状態になりました。カプサイシンのかなり濃度の高い抽出液を口に含んだ状態です。おかげで残りのカレーを食べるのにものすごく大変な状態になってしまいました。
食後は、今度は胃の中が火事状態が約1時間継続。ミルクを飲んだら違っていたのでしょうか・・・ でもカゼインは胃酸で変性してしまいそうですね。カプサイシンを除去してくれるでしょうか・・・

こちらも意外と辛いものが多いので、覚えておこう・・・

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2008年7月 7日 (月)

Japanese Ingredients

こちらに来て2年強になり、だいたいこちらの食材の事情が飲み込めて来た感じがします。
そんな中で、こちらに定着している日本食材が意外に多いことに改めて感心します。醤油を広めたのはキッコーマンの努力の結果という話は有名ですが、それ以外の食材は一体誰が広めたのでしょうか。

Shiitake mushroom、matsutake mushroom、nori、panko、kombu、tofu、edamame、ponzu など。これらのうち shiitake mushroom と panko と tofu は、特殊な料理人でなくともごく普通に使うようです。アメリカ人は黒い食材と白い食材は気持ち悪くてダメだと聞いたことがあります。カリフォルニアロールは、黒い海苔への抵抗感を回避するために外側にシャリを持って来たようですが、シャリだって白いじゃないの、と思いますね。でもコメを含めて穀物には抵抗がないようです。小麦粉だって(製粉すれば)真白ですし。スターシェフの Emeril Lagassee は比較的 nori を使うシェフのようですが、普通は sushi 以外では使われません。でも sushi でおなじみになったせいか、今では「黒いから気持ち悪い」ということはなさそうです。

豆腐は白いから気持悪いというのはどうにも理解できませんでした。が、これも少なくとも現在は当たっていないようです。Tofu はどんなスーパーマーケットに行っても必ず置いてありますが、特に和食に用いるというわけではなく、すでにこちらのレシピに溶け込んでいます。日本では豆腐は、白和えなどを除き、豆腐そのものとして食べることが殆どだと思いますが、こちらは必ずしもそうではありません。レシピを構成する1素材として用いられます。今日のテレビではいくつかのフルーツと一緒にブレンダーに入れて飲み物らしきものを作っていました。飲み物にするなら豆乳でいいのでは、と思います。当初豆乳なんてものがこちらで売られているとは想像だにしませんでしたが、これもどんなスーパーマーケットに行っても soy milk として売られています。豆腐は実に自由な発想で用いられていて、イタリア生まれのシェフ Giada De Laurentiis のレシピでは、"Grilled Tofu with Asiago and Walnut Pesto" などというものがありました。豆腐をグリルして asiago cheese と walnuts で作ったソースをかけたようなものです。

なお、こちらの tofu にも soft(または silken)と firm があります。絹ごしと木綿ごしの対比でしょう。しかしこちらの soft は日本の木綿より固いです。沖縄の豆腐と同じくらいでしょうか。従って firm になるとかなり日本の豆腐と印象が異なります。それと、食感がだいぶ違います。木綿ごしは絹ごしより固いと言っても、絹ごしを木綿で晒して脱水したものですね。脱水するときに、豆腐の内部で水の抜け方が完全に均一でないのでしょう、微妙な柵状組織になっているように思えます。この実に微妙なざらざら感が木綿ごしの魅力だと思います。それが、soft でも firm でも、完全に均一な組織になっているのです。完全に均一な滑らかな組織とは、卵豆腐のようなイメージです。それで、固い。Firm は、一端 soft を作ってから脱水するのではなく、soft も firm も、最初から凝固剤、それもグルコノデルタラクトンを多めに入れて目的とする固さの tofu を作っているものと想像しています。

Shiitake mushroom も特に和風のレシピということではなく、完全にアメリカ料理の素材の一部になっています。もはや shiitake が日本語であることを知らない人も少なくないかも知れません。

何とも複雑な事情だなと思うのが、panko です。Japanese panko とも呼ばれます。こちらにも bread crumb はあり、普通に売られているのですが、panko に比べて非情に細かい粒子のものです。バゲットを完全に乾燥させ、グラインダーで完全に粉砕したらそうなるのではないか、と思うような状態です。とんかつのような衣をつけたいときには panko を使うわけですが、この技法はごく普通に用いられています。Panko がポピュラーになる前はシリアルを砕いたものを使っていたのでしょうか。Panko は日本のハンバーグと同様、ミートローフに入れるレシピもあります。今ではかように panko は全く珍しい食材ではなく、きっとどの家庭にもあるのではないかと思います。袋の表面にはきちんと panko と書いてありますが、アメリカ人はこれがもともと何語だと思っているのでしょうか。非情に興味があります。日本語だと思っているかも知れません。でも「パン」がポルトガル語の "pão" だと知っているアメリカ人は殆どいないと想像します。ヨーロッパから日本経由でアメリカに伝わったものって、他にあるでしょうか?

Edamame は、もう随分前に、health conscious な人達の間で流行り、NY のバーで供されているという話を聞いたことがありました。実際に住んで見ると、さほどポピュラーとは思えません。オーガニック指向のスーパーで冷凍の edamame を買いましたが、なんと鞘から出した状態になっているので、どうも「夏の風物詩」という感じはありません。

Ponzu は結構普及しているようです。が、matsutake mushroom と kombu は、お目にかかることはありますが、滅多なことではありません。特に kombu は今のところ iron chef の Masaharu Morimoto が使うのしか目撃していません。

普及という意味では、全く普及していません(というより流通していません)が、Wagyu beef と Kobe beef が最上級の肉であるということを知らない人はいないようです(実際に食べたことのある人がどれだけいるか分かりませんが)。脂の味しかしないような日本の高級ビーフは、本来なら脂のないはずのところにびっしり脂が乗っていて、いわば超高脂血症の全身脂肪肝のような病的状態なわけですから、こちらのビーフの方がずっと健康的でおいしいと思うのに、何故だろうと不思議に思います。もちろんこちらでもビーフを含めた肉類は、成長ホルモンだのなんだの、不自然なことをやっているケースもあり、飼育状態もピンキリですから、こちらの肉が全部おいしいということではありません。

それと、Wagyu はともかくとしても、何故 Kobe なんでしょうか。確かに神戸ビーフは有名ですが松坂だってあるのに。確かに米沢だとだいぶマイナーになってしまうでしょうが・・・。

ヨーロッパでも Wagyu beef や Kobe beef は垂涎の的なんでしょうか?

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