Oyster
カキが好きです。生ガキは冬の楽しみの一つです。東京にいたときは、わざわざ的矢から取り寄せたこともありました。的矢のカキを食べたのは、大学院生のときに三重県出身の研究生が実家から送って貰ったのを、到着後すぐに食べたのが最初でした。カキは水揚げからの時間が短ければ短いほどおいしく、このときもこのことを知っているその研究生が、うまく時間を見計らってアレンジしてくれたのでした。
それまでも生ガキは何度も食べていましたが、この時のカキは全く別物と言って良く、今まで食べていたのは一体なんだったんだ、と思いました。
実家にいたときは時々カキフライなどが食卓に上ることはありましたが、それが冷凍だったのかウチで衣をつけたのかは分かりませんが、申し訳ないけれども一度もおいしいと思ったことがありませんでした。広島に出張に行った際など、カキフライやカキの土手鍋などを何度かトライしましたが、これもおいしいと思ったことがなく、生ガキがカキを最も旨く食う方法だと確信していました。
が、同じ生ガキでもこうまで違うとなると・・・
しかし、日本ではカキと言えば普通はマガキ(Crassostrea gigas)を指し、あまりそれ以上産地を意識することはありません。まあ的矢以外だと宮城・広島あたりが有名ですが、的矢を食べてしまうとあとはどこでも一緒で、居酒屋でもスーパーでも、どうせ的矢であるわけがないので産地がどこかは殆ど興味がありませんでした。
カキ好きとしては、海外に出かけたときにオイスターバーがあるとつい入ってしまいます。そして、どうして日本にはオイスターバーがないのか、とずっと不思議に思っていました。しかし、2004年には新装なった品川駅に、NY のグランドセントラルのオイスターバーが入ったとか。その他五反田・目黒・新宿などにもあるようですが、行ったことはありませんでした。
海外で最初にオイスターバーを経験したのは、なぜか香港だったと思います。香港のビクトリアピークにあるレストランで景色を見ながら・・ このときは「何でも、Kumamoto という品種がうまいらしいと」ということを知っている同行者がいて、Kumamoto を食べました。筆者はそれまでカキの品種などということを考えたこともなく、カキって品種があるのか~と思ったものです。
しかし夏の香港で生ガキを食べるのはちょっと抵抗がありました。日本では夏に生ガキなど食べませんし。が、外国では夏でも生ガキを食べるんだな~と思いました。が、ちょっと調べてみると、ここで供しているカキは全部輸入もの。そりゃ夏の香港の地元産の生ガキはちょっと・・・
何年かして NY のグランドセントラルのオイスターバーに行きました。ここで驚いたのが、カキの品種の多さ。メニューにズラっと並んでいます(今日のメニューをオンラインで見たら、28 種類ありました)。Kumamoto もありますが、知っているのはそれだけ。結局お勧めを3種類、2つずつ注文しました。何という品種か覚えていませんが、カナダ産の何とか言う品種が、非常に生臭く(というか表現のしようがないフレーバー)、流石にこれはダメだと思いましたが、とにかく品種によって非常に味が違うということが実感できました。品種によって値段も違いますが。
これは日本では経験できないことです。仮に日本にオイスターバーがあって、日本の有名どころのカキをたくさん揃えていたとしても、こんなに味が違うということはないでしょう。
オイスターバーでなくても、ちょっとウルサいシーフードレストランだと、カキは数種類おいてあります。ようやく最近メジャーなカキの名前を覚えかけてきたところですが、体系だって調べたことがありませんでした。
少し調べておかないと、今後困るので、調べてみました。でも今回はいつもお世話になる Wikipedia にカキの品種に関する情報がなかったので、
http://www.cuisinenet.com/digest/ingred/oyster/types.shtml
http://www.thenibble.com/reviews/main/fish/seafood/oyster-glossary.asp
などを参考にしました。
まず、アメリカには oyster として、種としては6種類あるようです。
Ostrea edulis: European oyster, flat oyster
Ostrea lurida: Olympia oyster
Crassostrea virginica: Atlantic oyster, Eastern oyster
Crassostrea gigas: Pacific oyster, Japanese oyster
Crassostrea sikamea: Kumamoto oyster
Crassostrea angulata: Portuguese oyster
(コロンの後に書いてあるのが一般的な英語名)
なお Kumamoto を Japanese に含める場合は5種になります。また、Olympia は絶滅に近く、もう食卓には上らないそうです。では Olympia と、殆ど見かけない Portuguese 以外の4種類について書きます。
O. edulis
カキを食べるなら R の着く月というのは、もともとこの種のことだったのかも知れません。夏場は産卵期のため、おいしくなくなるのだそうです。この種は特にフランスでは Bélon と呼ばれるようですが、これはワインやチーズと同じく AOC システムが適用されていて、南 Brittany 地方産のものしか名乗ってはいけないようです。Maine 州で Belon という名前のカキがありますが、そういうわけでこれはチョンボだそうです。
アメリカで普通に見かけるカキは、種としては次の3つのうちどれかです。
C. virginica
Atlantic oyster 等と呼ばれる通り、東海岸のカキです。北は Prince Edward Island から南はメキシコ湾まで分布するそうです。そして、成育場所によって実に味が違うので、virginica とひとまとめにせず、主として取れる場所の名前がつけられています。ちょうど「的矢ガキ」などと言うように。
後にローカルネームの一覧表を載せておきます。
一般論では、北に行くほど身がしまっていて、生食に適するとのことです。通年で食用可ですが、やはり夏場は北部産でも味が落ちるという人もいるようです。
地元ですと Chesapeake Bay というのがあります(バージニアになっていますが)。昔は、Chesapeake 湾はカキの宝庫で、浅瀬では舟が航行するのに危険なほどだったそうです。しかし乱獲により、現在ではピーク時の1%くらいの漁獲量しかないそうです。それにしても、夏場の Chesapeake 湾のカキは、ちょっと食べたい気がしません。
なお Totten Inlet はワシントン州のカキですが、この種類です。きっと東から持って行って養殖しているのでしょう。
C. gigas
Pacific oyster 等と呼ばれる通り、西海岸のカキで、種としては日本のものと同一です。
説明によると、幾つかの例外を除き、生食には向きにくいとのこと。12インチにも成長するため、half shell にするには大きすぎて硬すぎるとのことです。・・・そうかなあ? イワガキならともかく、12インチのマガキなんて日本では見たことがありませんが・・・
やはり一覧を載せておきます。
C. sikamea
C. kumamoto とも言うらしい。前述のとおり C. gigas の1 variant とする場合もあるらしい。種の中を産地によって区別するようなことはありません。オレゴンでもカリフォルニアでもさほど味は変わらないのでしょうか。
その名の通り日本の熊本原産だそうで、アメリカでは西海岸のカリフォルニア~ワシントン州でのみ成育するという話と、メキシコ湾からカナダ・British Columbia までという話があり、どちらが正しいか分かりません。でもとにかく、この C. sikamea、海外での評価は非常に高いですし、実際食して見るとおいしいカキなのですが、日本ではさっぱり知名度がありません。不思議に思っていましたが、今こちらでその辺の経緯を見つけました。日本国内でも復活を目指しているとか。筆者が日本に戻るころには市場でみかけるようになるでしょうか?
== C. virginica の産地別呼称 ==
Apalachiola, from FL
Blue Point, from Long Island, NY
Box, from Long Island, NY
Bras D’Or, from Cape Breton, Nova Scotia
Breton Sound, from Breton Sound, LA
Cape Ann, from Nova Scotia
Cape Breton, from Aspy Bay, Nova Scotia
Caraquet, from Caraquet region, New Brunswick
Chesapeake Bay, from Chesapeake Bay, VA
Chincoteague, from VA
Cotuit, from Nantucket Island, MA
Island Creek, from MA
Lynnhaven, from Virginia Beach, VA
Malpeque, from Malpeque Bay on Prince Edward Island
Patuxent, from Patuxent River, MD
Pemaquid, from ME
Pine Island, from
Pugwash, from Pugwash Point in Nova Scotia
Salutation Cove, from Prince Edward Island
Totten Inlet, from Puget Sound, WA
Wellfleet, from Cape Cod in MA
== C. gigas の産地別呼称 ==
Barron Point, from Skookum Inlet, WA
Cortes Island, from British Columbia
Elkhorn, from Willapa Bay, the Elkhorn
Fanny Bay, from Fanny Bay, British Columbia
Hama Hama, from Hama Hama River WA
Imperial Eagle, from Vancouver Island
Malaspina, from Canada’s Sunshine Coast
Pearl Bay, from Pearl Bay, Canada
Royal Miyagi, from British Columbia
Samish Bay, from
Steamboat, Sunset Beach, from Puget Sound, WA
Yaquina Bay, from Yaquina Bay, OR
== その他のカキ ==
Bélon (O. edulis), from southern Brittany, France
Marennes (O. edulis), from Marennes-Oléron, France
Mountain Island (O. edulis), from Blind Bay, Nova Scotia
Kumamoto (C. sikamea), from CA, OR and WA
Olympia (O. lurida), from Washington Sound, WA
Portuguese (C. angulata), from Spain
さて日本では近年秋~冬にノロウイルスが流行するようになりました。生ガキによるノロウイルス感染が良く心配されますが、実際には感染報告例はないそうで、良く管理されていることの現われだと思います。厚労省は二枚貝は85゚C・1分以上の加熱(特に内蔵)を推奨はするものの、特に生食を規制するわけでもないというスタンスのようです。日本から生ガキが消えたら悲しいですよね。
こちらでは特にノロウイルスを心配する向きはありませんが、その他の病原微生物や貝毒の心配は普通にあり、「絶対に危険ということもないけれども絶対に安全ということもない」などと言われているようです。
さて少し勉強したので、今度は実際に色々食べてみて、Kumamoto 以外にも好みのカキを見つけよう!
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