Nikomi
先日ちょっと月島方面の飲食店を調べようと思って、食べログでどんな店が人気があるのか見てみたところ、本日現在ダントツ一位は 4.13 ポイントの「岸田屋」。見た瞬間、筆者でも美味しんぼの山岡が三ツ星フレンチのシェフを連れて行って煮込みを食わせ、「素晴らしい仕事だ」と唸らせたというあの「岸田屋」であることくらいは分かりました。しかしまあこの岸田屋、ポイントもさることながら口コミ数が 223 件、トップ 500 にもランクされています(いずれも本日現在)。恣意的な書き込みがあったかないか分かりませんが、東京有数の有名店・人気店であることは間違いないようです。夕方 5 時の開店に合わせて行かないと座れないとか何とか。しかし口コミを少々読んでみるまで、「東京三大煮込み」なるものが存在することを筆者は知りませんでした。岸田屋はもちろんその「三大」の一角。そうなると他の2つを知りたいのが人情ですが、比較的すぐ分かりました。
東京三大煮込み on 関心空間 by 四月の旅人
東京に居酒屋の名店は数かずあれど、煮込みといえばこの3店──月島「岸田屋」、森下「山利喜」、そして北千住の「大はし」である。
だそうです。誰が選んだ「三大」なんでしょうか。ま、今のように万人が口コミを投稿できるシステムが出来るより遥か以前から食通はいましたからねえ、複数人の食通間の定評が流布したって別におかしくはありません。蕎麦屋の評価なんてのは昔からあったわけですし。それはともかく、この「四月の旅人」さんの書き込み、かなり気に入りました。
私はずっと以前からこの種の店が苦手である。開店と同時に満員になる。肩や肘をふれ合いながら酒を飲む。注文を通すのに、技術を要する(笑)。外に並ぶご同輩も気になる。
そうなのです。岸田屋の店名を見た瞬間、行ってみる気になりかけたのですが、この寒空の中、行列の最後尾につくのはちょっとな…と思ったわけです。ラーメン屋ならまだ席の回転も計算できますが、居酒屋では…
しかし、筆者が昨年秋、仙台に行ったときは、実はまさにこの手の居酒屋を、わざと東京出発前からピンポイントで狙いを定めて行ったのです。それは食べログで仙台ナンバーワンの居酒屋「源氏」という店で、場所は「文化横丁」。国分町なら知っていましたが、文化横丁というのはそれまで筆者は知りませんでした。地図をプリントアウトして開店とほぼ同時に行って見ると、2/3 くらいは席が埋まっていたかと思います。予め読んでいた口コミには、満席に見えても女将さんは「一杯です」とは言わず客に「少し詰めてあげて」と言うと客が皆少しずつ詰めて新しい客を招じ入れるとありましたが、まさにその通り。その結果、時間が経つにつれて「肩や肘をふれ合い」度合いが少しずつ高くなって行くわけです。まあ今回の「源氏」の場合は旅行先のことで、隣り合わせた地元の方から震災の話を聞いたり、千葉から来たというと、反対に「そりゃ大変だったでしょう」などと見舞いを言われたり、温かい気分にさせて貰いました。折角の旅行なのだから、多少待ち時間があっても、多少窮屈でもいいんです。
でも東京で、千葉で、地元でそれをやる気にはなかなかなりません。ですから東京三大煮込み、当分行けそうにありません。が、別に「三大」でなくても筆者は割合近所の店でも満足できます。
ところで煮込みという皿、外で酒を飲むようになってすぐ覚えた皿です。ですから恐らく大学 1 年、20 歳になるかならないかくらいだったでしょう。定かな記憶があるわけではありませんが、恐らく場所は国立駅南口駅前に当時「三好屋」という居酒屋がありましたが、そこではないかと思われます。他の人が頼んだ煮込みをつついて、「世の中にはこんな旨いものがあるのか」と思ったものです。それからずっと煮込みを食べ続けたというのはオーバーにしても、好物であり続けたわけですが、アメリカ駐在の4年間は満足な煮込みにありつくことが出来なかったのは言うまでもありません。なんちゃって日本食レストランは論を俟つことなく、自分のウチでもまともな煮込みを調理することは出来ません。で、日本に帰国した先が東京ではなく千葉・山武だったわけで、山武でも何度か煮込みを食べましたが何かいつも多少の違和感を覚えていたように思います。それが、先ほど岸田屋の食べログを見ただけでなく、先日、近所ででしたが実に5年半ぶりに東京の煮込みを食したのです。これこれ。この味です。帰って来たな~ と実感しました。
しかし改めて思いますに、煮込みを看板料理にしている居酒屋、実に多くないでしょうか。店先にぶら下がっている赤提灯には大抵「煮込み・名物」とか「煮込み・自慢」とか書いてあるような気がします。海鮮居酒屋でない居酒屋の売りは、焼き鳥か煮込みのどちらかしかないような気もします。そしてまた、「三大煮込み」は別格だとしても、普通の居酒屋の煮込みは、店によってそう極端に旨いものもなければ食えないほどまずいものもないような気がします。煮込みは、居酒屋の店頭での作業だけを見ていると結構単純で短時間で客に供されますが、下ごしらえ・仕込みから起算するととんでもない手間と技術を要する皿なので、もっと出来上がりに差が出てもいいような気がするのですが、どこの店でも業務用の「ベース」を使っているんですかね? チェーン居酒屋ならばそれに加えて当然セントラルキッチンでしょうけれども。
さてここでお約束のウィキペディア。
もつ煮(もつに)とは、牛、豚、鶏、馬など、鳥獣の内臓を煮込んだ料理の総称である。
表記や呼称はもつ煮込み、もつ煮込などがあり、モツをカタカナ表記する場合もある。単に「煮込み」と呼び、臓物(ぞうもつ)(=内臓)を表す「もつ」という語句を省くことがある。この項では主にその歴史的な成り立ちと日本の関東地方で食されるもつ煮を中心に記述する。
根拠なく、なんとなく関東のものじゃないかと思っていたのですが、そんな感じですかね。で、
イタリアには「トリッパ」(trippaという語句自体が胃という意味がある)というトマトをベースにした味付けで牛の内臓を煮込む料理がある。フランスでは内臓全般をトリップと呼び、一般的な食材とする。アンドゥイエットのように豚の腸に詰めてソーセージのようにするほか、カン風トリップのように煮込み料理にもされる。スペインにはカジョスもしくはカリョス(callos)と呼ばれる牛の胃を赤ワインで煮込んだ料理がある。
はい。Callos a la Madrilena、アメリカで何度か食べました。素晴らしく美味でした。何度か食べたのは、あまりに美味だったからリピートしたためです。Callos a la Madrilena とは、直訳すると Tripe Madrid Style という意味ですが、DC および Bethesda, MD にある筆者の信奉するシェフ José Andrés の店 Jaleo の当時のメニューでも同じ Callos A La Madrilena で、説明としては beef tripe stew with chickpeas and sausage と書いてあります(残念ながら今のメニューにはないようです)。日本の煮込みのレシピはどこにでも載っていますが、この Callos a la Madrilena のレシピ、探してみたので引用してみます。いつも参照する Allrecipes でも Foodnetwork でもありません。また残念ながら José Andrés のレシピでもありません。
Callos a la Madrilena on BigOven
[材料](8人分)
EVオリーブオイル 大さじ 6
赤ワイン 2カップ
チョリソソーセージ 11 本
牛の胃 1ポンド
塩 少々
タイム(生) 大さじ 1
ガーリック 10カケ
子牛すね肉 2ポンド
トマトペースト 1/2カップ
スパニッシュオニオン(さいの目) 2個分
クローブ 2個
ベーコン(5ミリ角) 1/4ポンド
パプリカ 大さじ 2
黒コショウ 大さじ 2
シナモン 小さじ 1/4
レッドペッパー(フレーク) 大さじ 2
ガーリックスライス 6カケ分
Morcilla(血のソーセージ) 1/4ポンド
[作り方]
1. 胃とすね肉を大なべに入れ、水で満たす。半分のオニオン、クローブ、ガーリックを入れ、沸騰させる。
2. 沸騰させたまま弱火にし、覆いをして煮る。
3. 45分したら胃は取り出し、冷ます。残りはそのままさらに 1 時間煮る。
4. すね肉を取り出し、煮汁は 2 リットル保存しておく。
5. 冷ました胃を 2.5 センチ×5 センチの三角形に切る。
6. すね肉は 2.5 センチ角の立方体に切る。
7. 6~8 リットルのスープポットにオリーブオイルを煙が出るまで中火で熱し、残りのオニオンとガーリックスライスを入れ、柔らかく焼き色が付くまで 6~7 分炒める。
8. チョリソ、ベーコン、パプリカ、タイム、シナモンを加え、良く混ぜながら 8 分炒める。
9. トマトペースト、ワイン、レッドペッパー、4.の煮汁を加え、沸騰させる。
10. 弱火にし、覆いをせずにシチューのようにとろみがつくまで 1 時間煮る。
11. Morcilla を 1 センチ厚に切り、10.に加える。
12. 全体が温まるまで 5 分熱する。
13. 塩コショウで味を整え、トーストと楊枝を添えて供する。
ちなみに牛の4つある胃のうち、どの胃を用いるかについては、Wiki の tripe を見ると、
Tripe (from French tripe which is from Italian trippa) is a type of edible offal from the stomachs of various farm animals.
Beef tripe is usually made from only the first three chambers of a cow's stomach: the rumen (blanket/flat/smooth tripe), the reticulum (honeycomb and pocket tripe), and the omasum (book/bible/leaf tripe). Abomasum (reed) tripe is seen much less frequently, owing to its glandular tissue content.
だそうで、tripe というと、
第1胃:ミノ:rumen (blanket/flat/smooth tripe)
第2胃:ハチノス:reticulum (honeycomb and pocket tripe)
第3胃:センマイ:omasum (book/bible/leaf tripe)
を指し、
第4胃:ギアラ:abomasum (reed)
を用いることはまずないそうです。確かに筆者が食したのもハチノスだったように思います。いや DC では寧ろ最初、"tripe" という単語が分からず、出てきたものを見て初めて "tripe" の意味が分かったという方が当たっています。
Callos が Spanish かどうかはあまり意識していませんでしたが、アメリカで旨い煮込みは食べられないが、その代わりこんなに旨い tripe が食べられるのならそれはそれでいいか、と思っていました。逆に東京にも Spanish レストランは沢山ありますが、これに匹敵する Callos は食べられるのでしょうか? と思って早速食べログで「東京都× callos」とやって見ると、御茶ノ水、銀座、日比谷に各1軒、ポイントは 3.28~3.37。まずまずのようです。Callos a la madlilena〔原文ママ〕で「牛ミノ(胃袋)の煮込み」というユーザーの口コミがありました。写真では本当にミノかどうかは判然としませんが、ミノも callos の一部ですから別にいいんですが、本当にそうならハチノスも入れた方がよりいいような。ま、callos が東京で食べられることは分かりましたが、José Andrés の callos はやっぱり彼のレストランに行かないとダメですよねえ。
さて話を戻して、煮込み。José Andrés の店は予約が出来るからいいんですが、岸田屋は予約が出来ないのが難点。上で書いたとおり寒風の中行列する気はありません。味は近所の及第点レベルの店で OK なので、コートの襟を掻き合わせてほんの少しだけ寒風の中を歩いて(←ここ重要。温かい地下街から直接温かい居酒屋に入ったら面白くありません)その店の暖簾をくぐると煮込みの大なべから立ち上る湯気で一瞬メガネが曇る。とまあこれくらいの演出があれば煮込みの味も少しは増そうというもの。今日も寒いようです。今晩はどこの煮込みを食べに行こうかな。
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