2012年1月28日 (土)

Nikomi

先日ちょっと月島方面の飲食店を調べようと思って、食べログでどんな店が人気があるのか見てみたところ、本日現在ダントツ一位は 4.13 ポイントの「岸田屋」。見た瞬間、筆者でも美味しんぼの山岡が三ツ星フレンチのシェフを連れて行って煮込みを食わせ、「素晴らしい仕事だ」と唸らせたというあの「岸田屋」であることくらいは分かりました。しかしまあこの岸田屋、ポイントもさることながら口コミ数が 223 件、トップ 500 にもランクされています(いずれも本日現在)。恣意的な書き込みがあったかないか分かりませんが、東京有数の有名店・人気店であることは間違いないようです。夕方 5 時の開店に合わせて行かないと座れないとか何とか。しかし口コミを少々読んでみるまで、「東京三大煮込み」なるものが存在することを筆者は知りませんでした。岸田屋はもちろんその「三大」の一角。そうなると他の2つを知りたいのが人情ですが、比較的すぐ分かりました。

東京三大煮込み on 関心空間 by 四月の旅人

東京に居酒屋の名店は数かずあれど、煮込みといえばこの3店──月島「岸田屋」、森下「山利喜」、そして北千住の「大はし」である。

だそうです。誰が選んだ「三大」なんでしょうか。ま、今のように万人が口コミを投稿できるシステムが出来るより遥か以前から食通はいましたからねえ、複数人の食通間の定評が流布したって別におかしくはありません。蕎麦屋の評価なんてのは昔からあったわけですし。それはともかく、この「四月の旅人」さんの書き込み、かなり気に入りました。

私はずっと以前からこの種の店が苦手である。開店と同時に満員になる。肩や肘をふれ合いながら酒を飲む。注文を通すのに、技術を要する(笑)。外に並ぶご同輩も気になる。

そうなのです。岸田屋の店名を見た瞬間、行ってみる気になりかけたのですが、この寒空の中、行列の最後尾につくのはちょっとな…と思ったわけです。ラーメン屋ならまだ席の回転も計算できますが、居酒屋では…

しかし、筆者が昨年秋、仙台に行ったときは、実はまさにこの手の居酒屋を、わざと東京出発前からピンポイントで狙いを定めて行ったのです。それは食べログで仙台ナンバーワンの居酒屋「源氏」という店で、場所は「文化横丁」。国分町なら知っていましたが、文化横丁というのはそれまで筆者は知りませんでした。地図をプリントアウトして開店とほぼ同時に行って見ると、2/3 くらいは席が埋まっていたかと思います。予め読んでいた口コミには、満席に見えても女将さんは「一杯です」とは言わず客に「少し詰めてあげて」と言うと客が皆少しずつ詰めて新しい客を招じ入れるとありましたが、まさにその通り。その結果、時間が経つにつれて「肩や肘をふれ合い」度合いが少しずつ高くなって行くわけです。まあ今回の「源氏」の場合は旅行先のことで、隣り合わせた地元の方から震災の話を聞いたり、千葉から来たというと、反対に「そりゃ大変だったでしょう」などと見舞いを言われたり、温かい気分にさせて貰いました。折角の旅行なのだから、多少待ち時間があっても、多少窮屈でもいいんです。

でも東京で、千葉で、地元でそれをやる気にはなかなかなりません。ですから東京三大煮込み、当分行けそうにありません。が、別に「三大」でなくても筆者は割合近所の店でも満足できます。

ところで煮込みという皿、外で酒を飲むようになってすぐ覚えた皿です。ですから恐らく大学 1 年、20 歳になるかならないかくらいだったでしょう。定かな記憶があるわけではありませんが、恐らく場所は国立駅南口駅前に当時「三好屋」という居酒屋がありましたが、そこではないかと思われます。他の人が頼んだ煮込みをつついて、「世の中にはこんな旨いものがあるのか」と思ったものです。それからずっと煮込みを食べ続けたというのはオーバーにしても、好物であり続けたわけですが、アメリカ駐在の4年間は満足な煮込みにありつくことが出来なかったのは言うまでもありません。なんちゃって日本食レストランは論を俟つことなく、自分のウチでもまともな煮込みを調理することは出来ません。で、日本に帰国した先が東京ではなく千葉・山武だったわけで、山武でも何度か煮込みを食べましたが何かいつも多少の違和感を覚えていたように思います。それが、先ほど岸田屋の食べログを見ただけでなく、先日、近所ででしたが実に5年半ぶりに東京の煮込みを食したのです。これこれ。この味です。帰って来たな~ と実感しました。

しかし改めて思いますに、煮込みを看板料理にしている居酒屋、実に多くないでしょうか。店先にぶら下がっている赤提灯には大抵「煮込み・名物」とか「煮込み・自慢」とか書いてあるような気がします。海鮮居酒屋でない居酒屋の売りは、焼き鳥か煮込みのどちらかしかないような気もします。そしてまた、「三大煮込み」は別格だとしても、普通の居酒屋の煮込みは、店によってそう極端に旨いものもなければ食えないほどまずいものもないような気がします。煮込みは、居酒屋の店頭での作業だけを見ていると結構単純で短時間で客に供されますが、下ごしらえ・仕込みから起算するととんでもない手間と技術を要する皿なので、もっと出来上がりに差が出てもいいような気がするのですが、どこの店でも業務用の「ベース」を使っているんですかね? チェーン居酒屋ならばそれに加えて当然セントラルキッチンでしょうけれども。

さてここでお約束のウィキペディア。

もつ煮

もつ煮(もつに)とは、牛、豚、鶏、馬など、鳥獣の内臓を煮込んだ料理の総称である。

表記や呼称はもつ煮込み、もつ煮込などがあり、モツをカタカナ表記する場合もある。単に「煮込み」と呼び、臓物(ぞうもつ)(=内臓)を表す「もつ」という語句を省くことがある。この項では主にその歴史的な成り立ちと日本の関東地方で食されるもつ煮を中心に記述する。

根拠なく、なんとなく関東のものじゃないかと思っていたのですが、そんな感じですかね。で、

イタリアには「トリッパ」(trippaという語句自体が胃という意味がある)というトマトをベースにした味付けで牛の内臓を煮込む料理がある。フランスでは内臓全般をトリップと呼び、一般的な食材とする。アンドゥイエットのように豚の腸に詰めてソーセージのようにするほか、カン風トリップのように煮込み料理にもされる。スペインにはカジョスもしくはカリョス(callos)と呼ばれる牛の胃を赤ワインで煮込んだ料理がある。

はい。Callos a la Madrilena、アメリカで何度か食べました。素晴らしく美味でした。何度か食べたのは、あまりに美味だったからリピートしたためです。Callos a la Madrilena とは、直訳すると Tripe Madrid Style という意味ですが、DC および Bethesda, MD にある筆者の信奉するシェフ José Andrés の店 Jaleo の当時のメニューでも同じ Callos A La Madrilena で、説明としては beef tripe stew with chickpeas and sausage と書いてあります(残念ながら今のメニューにはないようです)。日本の煮込みのレシピはどこにでも載っていますが、この Callos a la Madrilena のレシピ、探してみたので引用してみます。いつも参照する Allrecipes でも Foodnetwork でもありません。また残念ながら José Andrés のレシピでもありません。

Callos a la Madrilena on BigOven

[材料](8人分)
EVオリーブオイル 大さじ 6
赤ワイン 2カップ
チョリソソーセージ 11 本
牛の胃 1ポンド
塩 少々
タイム(生) 大さじ 1
ガーリック 10カケ
子牛すね肉 2ポンド
トマトペースト 1/2カップ
スパニッシュオニオン(さいの目) 2個分
クローブ 2個
ベーコン(5ミリ角) 1/4ポンド
パプリカ 大さじ 2
黒コショウ 大さじ 2
シナモン 小さじ 1/4
レッドペッパー(フレーク) 大さじ 2
ガーリックスライス 6カケ分
Morcilla(血のソーセージ) 1/4ポンド

[作り方]
1. 胃とすね肉を大なべに入れ、水で満たす。半分のオニオン、クローブ、ガーリックを入れ、沸騰させる。
2. 沸騰させたまま弱火にし、覆いをして煮る。
3. 45分したら胃は取り出し、冷ます。残りはそのままさらに 1 時間煮る。
4. すね肉を取り出し、煮汁は 2 リットル保存しておく。
5. 冷ました胃を 2.5 センチ×5 センチの三角形に切る。
6. すね肉は 2.5 センチ角の立方体に切る。
7. 6~8 リットルのスープポットにオリーブオイルを煙が出るまで中火で熱し、残りのオニオンとガーリックスライスを入れ、柔らかく焼き色が付くまで 6~7 分炒める。
8. チョリソ、ベーコン、パプリカ、タイム、シナモンを加え、良く混ぜながら 8 分炒める。
9. トマトペースト、ワイン、レッドペッパー、4.の煮汁を加え、沸騰させる。
10. 弱火にし、覆いをせずにシチューのようにとろみがつくまで 1 時間煮る。
11. Morcilla を 1 センチ厚に切り、10.に加える。
12. 全体が温まるまで 5 分熱する。
13. 塩コショウで味を整え、トーストと楊枝を添えて供する。

ちなみに牛の4つある胃のうち、どの胃を用いるかについては、Wiki の tripe を見ると、

Tripe

Tripe (from French tripe which is from Italian trippa) is a type of edible offal from the stomachs of various farm animals.

Beef tripe is usually made from only the first three chambers of a cow's stomach: the rumen (blanket/flat/smooth tripe), the reticulum (honeycomb and pocket tripe), and the omasum (book/bible/leaf tripe). Abomasum (reed) tripe is seen much less frequently, owing to its glandular tissue content.

だそうで、tripe というと、

第1胃:ミノ:rumen (blanket/flat/smooth tripe)
第2胃:ハチノス:reticulum (honeycomb and pocket tripe)
第3胃:センマイ:omasum (book/bible/leaf tripe)

を指し、

第4胃:ギアラ:abomasum (reed)

を用いることはまずないそうです。確かに筆者が食したのもハチノスだったように思います。いや DC では寧ろ最初、"tripe" という単語が分からず、出てきたものを見て初めて "tripe" の意味が分かったという方が当たっています。
Callos が Spanish かどうかはあまり意識していませんでしたが、アメリカで旨い煮込みは食べられないが、その代わりこんなに旨い tripe が食べられるのならそれはそれでいいか、と思っていました。逆に東京にも Spanish レストランは沢山ありますが、これに匹敵する Callos  は食べられるのでしょうか? と思って早速食べログで「東京都× callos」とやって見ると、御茶ノ水、銀座、日比谷に各1軒、ポイントは 3.28~3.37。まずまずのようです。Callos a la madlilena〔原文ママ〕で「牛ミノ(胃袋)の煮込み」というユーザーの口コミがありました。写真では本当にミノかどうかは判然としませんが、ミノも callos の一部ですから別にいいんですが、本当にそうならハチノスも入れた方がよりいいような。ま、callos が東京で食べられることは分かりましたが、José Andrés の callos はやっぱり彼のレストランに行かないとダメですよねえ。

さて話を戻して、煮込み。José Andrés の店は予約が出来るからいいんですが、岸田屋は予約が出来ないのが難点。上で書いたとおり寒風の中行列する気はありません。味は近所の及第点レベルの店で OK なので、コートの襟を掻き合わせてほんの少しだけ寒風の中を歩いて(←ここ重要。温かい地下街から直接温かい居酒屋に入ったら面白くありません)その店の暖簾をくぐると煮込みの大なべから立ち上る湯気で一瞬メガネが曇る。とまあこれくらいの演出があれば煮込みの味も少しは増そうというもの。今日も寒いようです。今晩はどこの煮込みを食べに行こうかな。

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2012年1月27日 (金)

Favorite bread

筆者が「しっとり、もちもち」系の日本の食パンが嫌いだ、という話を延々と書いて来ましたが、では逆にどんなパンが好きなのか、これまた実にどうでもいい話ですが話のついでに書いておきましょう。

結論。日本で量産されているタイプのパンでなければ、大抵 OK です。

中でも好みなのは bâtard、ciabatta 系のものです。これらはサンドウィッチに用いても、ディナーで食しても OK です。
また、loaf 系のものでも日本のように真っ白なものではなく、胚芽入りや全粒粉や小麦以外の穀物をブレンドしたもので、見た目は loaf であっても粗めの食感がするものが好きです。
東海岸でホットドッグ、sub、cheesesteak その他のサンドウィッチに用いられるパンは hot dog buns とか hoagie roll とか勝手に呼ばれているのと、メーカーによって実に色々な生地ですからあまり「これ」という定義づけはありませんが、筆者の理解では典型的な bâtard、ciabatta よりは少し柔らかめに作ってあり、翌日になってもカチカチにはならないようなものだと思っています。そして、これは完全に筆者の思い込みだと思いますが、そのまま食べるのではなくてサンドウィッチの具材と一緒に食べると旨くなるように出来ているように思います。既に何度も書いたとおりこれが旨い。日本の D 社のホットドッグは、NY の路上で食したホットドッグの旨さに感激した D 社の社長がそれを再現したくて作ったメニューだそうですが、筆者には全く理解できません。日本には東海岸なら普通に食べられるような hoagie roll は多分存在しないのでしょうし、また作っても売れないのでしょう。

ライ麦のパンは日本ではもちろんアメリカでもあまりポピュラーではなく、東欧~ドイツあたりでポピュラーなようですが、これはこれでかなり好物だったりします。ものによっては結構酸味が強かったりしますし、「しっとり」しているものは多そうですが全然「もちもち」ではありませんから恐らくこれを好物とする日本人はかなり少数派だと思います。これの代表例として筆者の中で非常に強い記憶として残っているのは、リトアニアのカウナスからドイツ・ハンブルクに向かうフライトの中の機内食として出された質素なサンドウィッチです。ライ麦の黒パンで作ったお世辞にも美味しいサンドウィッチではありませんが、妙に好きなのです。

袋入りのスナック菓子(グリコのプリッツのことではなく、欧米のスナック菓子のことです)ではなくパンとしてのプレッツェルを最初に食したのはミュンヘンででした。しかしなんとそのプレッツェルはサンドウィッチに作ってありました。今でこそ驚きませんが、あんなに空洞の多いパンを水平方向にスライスして間に具材を挟むという発想は、筆者には不思議で仕方ありませんでした。アメリカではプレッツェルはモールに行けばかならず1軒や2軒は店が入っていて揚げたてが食べられますが、それでもディナーなどで出てくることはありませんから、パンと言うよりはやっぱりスナックの一種と考えた方がいいでしょう。カロリーが高いので滅多に食べませんでしたが、実は筆者、かなり好物です。

イタリアでレストランに入ると、何も注文する前から問答無用でまず袋に入ったグリッシーニが出てきます。アメリカにもそういうイタリアンレストランがたまにはあります。ウィキではこれもパンに分類しているのでここに書いているのですが、これも筆者の好物です。グリッシーニは細くてポリポリとした食感ですが、紛れもなくパンです。筆者はイタリアのレストランで、一家四人で食事に来ていた家族が、その中の中学生くらいの女の子も含めて、プリモが出てくるまでグリッシーニを何袋かおかわりした後、出てきた遠慮ないサイズのパスタを平気で平らげ、次のセコンドも楽しく歓談しながら平らげるところを見て目を丸くした記憶があります。イタリア人の体格は勿論人によりますが一般にヨーロッパでは小柄な方で日本人が引けを感じない人種ですが、胃袋の構造はまるで違うようです。筆者はいくらグリッシーニが好物と言えども、そんなことをやっていたらパスタ一皿すらも finito できません。

コーンブレッドはアメリカのカジュアルレストランやダイナーなどでお目にかかることが出来ますが、ほのぼのとした味わいが割合好みです。ただし食感は比較的ぼそぼそしたものが多いので、日本人の好みには合わないケースが多いでしょう。
ウィキではトルティーヤもパンに含めていますので言及しておきますが、これも結構好きです。ただし、トルティーヤは言うまでもなく本来トウモロコシの粉で作りますが、アメリカでさえもスーパーマーケットでちょっと気を抜くと小麦粉のものをつかんでしまいます。Flour tortilla しか置いていない場合すらあります。筆者の好きなのは当然のことながらトウモロコシで作った純正トルティーヤです。

特に好きでも嫌いでもないパン。クロワッサン、ベーグルなどがそうでしょうか。

どちらかと言うと好きでないパン。スコーン、マフィン、デニッシュ、ビスケット。

かなりキビしかったパン。インジェラ。インジェラをパンに含めるのが妥当かどうか分かりませんが、トルティーヤやピザをパンに含めるならインジェラを含めたって確かにバチはあたりますまい。DC で毎年毎年ベスト 100 に入る店の一つに、Etete というエチオピア料理店があります。興味を持った筆者は一度だけ行ったことがあります。原料は小麦粉ではなくテフという植物で、それを発酵させたものだそうですが、ウィキにあるとおり酸味のあるかなり個性の強い風味で、ちょっと好きにはなれませんでした。DC の U street 地区は little Ethiopia の様相を呈していて、エチオピア料理店はいくつもあります。U st に行く日本人はあまりいないと思いますが、Georgetown のエチオピア料理店は日本人にも割合知られていて、話のネタとして連れて行かれた人が悉く「ダメだ~」と言うのがこのインジェラです。でも Etete が人気を博しているということから、アメリカ人はこの味、好きなんですねえ。それだったらライ麦パンももっと普及しそうなものなのに、人の嗜好というのは分からないモンです。

今日は記念日、というときにはセラーからワインを1本おろします。純粋にワインの味のみを楽しみたいときには食事は寧ろ邪魔になるというのがこの10年くらいの筆者のスタンスです。Grand vin の super vintage の 25 年ものに対抗できる皿など、三ツ星シェフですらもそうそう作れるものでもないと考えています。そんなとんでもないワインが筆者のセラーにごろごろ寝ているわけではありませんが、5000円以下の4級シャトーのセカンドにしたところで、家庭で気楽に作れる食事に合うとは思えませんし、デパ地下のデリでも力不足です。かようなわけで、何らかの記念日に筆者のウチでセラーからワインをおろすときは、合わせる食事はパンとバターのみ。バターは有塩の発酵バターに限りますがこれはまた別の機会に詳細が書けるかと。今日はパンの方です。パンはバタールでもバゲットでもいいのですが、さりとて何でもいいわけでもなくて簡単なような面倒なような。基本は、フランス式に「次の日にはカチカチになってしまって食べられないからその日のうちに食べないといけない」ようなものでないとダメです。日本の大手メーカーのものは焼き色こそ「フランスパン」ですが中は日本式なのでアウト。しかたないのでアメリカ赴任前は会社帰りにリトルマーメイドなどに寄って買っていましたが、時間帯からして在庫があるかどうか微妙。入手できないとなると大回りしてデパ地下に寄ったりして面倒でした。駐米中はこれが全然問題なし。当たり前ですね。スーパーマーケットは基本的にだいたいどこでも自前のベーカリーを持っていますし、バタールなどは基本食材ですからいつでも買えます。問題はむしろバターのほうでしたがこれは別の機会に書きます。帰国後、千葉・山武では困りました。生活圏内に及第点のバタールが見当たらないのです。隣町・八街には大人気のベーカリーがあったのですが、バタールのニーズは殆どないらしく、おまけに昨年夏頃から体調を壊されて休業とか。
さて東京に戻ってきました。5年間の留守の間に変わったのか、5年前から既にそうだったのか記憶があいまいですが、近所のスーパーマーケットにはベーカリーが併設されていて、結構いつ行っても焼きたてに近いバタールが買えます。エシレのバターも常備。問題全て解決。これでいつでもワインが開けられます。ワインもすべて留守中の5年間、レンタルセラーで熟成が進んだことですし。

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2012年1月17日 (火)

Pullman Loaf 2

筆者の嫌いな日本の食パンですが、最初から嫌いだったわけではありません。子供の頃から成人するまでは朝食のメインメニューとして食べ続けていたわけですが、実家を出てからもっと色々なパンがあることを知って、食パンに戻れなくなったという経緯です。ですから食パンについては人並みの薀蓄はあります。

極めてどうでもいいことばかりですが、筆者の食パン経験をいくつか書き残しておきます。

[袋を開けると酒かすのにおいがした]
最近の食パンはどうだか知りませんが、昔、買ってきた食パンの袋を破ると、酒かすのようなにおいを感じたのは筆者だけだったのでしょうか。筆者は今でこそ上質な酒かすを用いた飲料・料理なら welcome ですが、当時出回っていた酒かすは、想像するに三醸酒の仕込みで出た酒かすが大部分だったのではないかと思うわけですが、そんな酒かすで作った飲料・料理など旨いわけもなく、匂いすらダメでした。当時市販されていた粕漬けや奈良漬は同じ食卓上にあるだけで気分が悪くなるようなにおいのものが多く、食パンの袋を開封すると、わずかですがそれと類似のにおいがしました。まあいくらなんでも食パンの製造工程で酒かすが使われているとは思いませんが(個人のHBならともかく工業生産で)、穀類を酵母で発酵させる工程自体は共通なわけですから類似のにおいのする代謝物が生成していてもおかしくはありません。
まあこれは上に書いたとおり、気分が悪くなるほど強いものではなく、開封直後に少し感じる程度であって、その後はもう分からなくなってしまいます。ただ、商品によって強さに違いがあるようには思いました。最も強く感じたのは給食に出てきた食パンだったように記憶しています。これらのことから、全く根拠に乏しいのですが、安物の食パンほど酒かす臭がするのではないかと思うようになりました。
近頃では地方のスーパーマーケットでも自前のベーカリーを持ち、焼きたてのパンを販売したりしていますが、そういうところではまずこんな臭いのするパンに出会うことはありません。昭和の時代の大量生産品の食パンだからこその話なのかも知れませんが、筆者にとっての食パンについてのネガティブ要因の一つです。

[食パンの生地にはタテヨコがある]
イカの可食部で、所謂「身」と呼ばれる部分は生物学では外套膜と言います。イカは、この外套膜の中に海水を一杯に吸い込み、次の瞬間、一気に吐き出すことでジェット推進により泳ぎます。ここで「一気に吐き出す」ことが重要で、そのためには外套膜全体が寸分のズレもなく、一斉に、極力短い時間で収縮することが必要なのです。イカはそのための優れた装置を2つ装備しています。一つは巨大神経。神経生理学の実験材料として高校の生物で出てくるアレです。で、神経は太ければ太いほど伝導速度が早いので、イカの巨大神経はとてつもないスグレモノです。もう一つは外套膜をリング状に走る無数の筋肉。脳から出た筋収縮の指令は巨大神経を通り、まず外套膜上の最も出口寄りのリング筋肉を収縮させます。次、2本目…と最後、エンペラの先まで行くわけですが、これがスグレモノの巨大神経のおかげで実に一瞬にして完結。外套膜全体が一瞬で強く収縮することで、見事ジェット推進が可能というわけです。
さて巨大神経はここで忘れて、丈夫なリング筋肉のために、料理の世界では考えなければならないことがあります。それはイカのさばき方です。リング筋肉を残すのか、切るのか。イカソウメンの場合は、切ります。外套膜をまず縦方向に切り開いたら、ソウメンは縦方向に包丁を入れて作ります。横方向に包丁を入れても作れますが、これだとリング筋肉が保存されてしまうため、口に入れても噛み切れません。イカの煮物はリング状のブツ切りにすることが多いですが、これは柔らかく煮ることが前提だからで、しかしそれでも厳しいお年寄りなどに供する場合はリング状にせず、縦方向の短冊状に切るとだいぶラクになるはずです。
さて前置きが長くなりましたが、食パンの生地にもタテヨコがあります。そんなことはネット上のどこにも確認できませんでしたが、筆者の経験では、明らかにタテヨコがあります。よく TVCM で「しっとりもちもち」系の焼きたて厚切りトーストを裂くと、湯気をたてていかにもしっとりとした白い絹のような中身が現れますが、あのとき食パンの身は「縦」に裂けていきます。あの食パンの持ち方を 90度変えて同じことをやっても裂けません。筆者は関東ですから8枚切りで、しかも筆者は子供の頃から焼き色が完全につく程度にまで良く焼くので(この頃から既に「しっとり、もちもち」が嫌いだった?)、「しっとり、もちもち」度はかなり薄いトーストですが、それでも横方向には裂けません。筆者は当時からディップ系の食べ方(と言っても前日のカレーやミートソースの残りなどですが)が好きだったのですが、ディップのためにトーストを一口サイズにちぎるのに、縦方向に裂けるのは問題ないものの、横方向に裂けないのは問題です。縦方向にしか裂けないとなると、裂いた1ピースの横方向は好きなサイズに出来ますが、縦方向は常にもとの食パンと同じ長さにしかならないからです。まあ、裂けないと言っても所詮パンですから、無理やり千切れば千切れますが、切断箇所付近は完全に潰れてしまいます。これは美しくありませんし、いくら「しっとり、もちもち」が嫌いとは言え、「堅く握ったパン玉」が旨いはずもありません。筆者はこれに対して、試行錯誤を繰り返してひとつの解決策を見出しました。まず、良く焼き8枚切りトーストだと、横方向には「裂け」ませんが、山折・谷折を一度ずつ行うと、「折れ」ます。よって、焼いたトーストをまずこの方法により上下半分ずつに折り取っておいて、後はおもむろに縦に裂いてはディップして食べるという寸法です。
上記では「裂いてからディップして食べる」と書いていますが、先にバター等を全面に塗ってからかじって食べていく場合は、実はもっと生地の向きというのは顕著に影響するのです。筆者は交通事故のせいで上の前歯がブリッジ状態なので、前歯にかかる前後方向の圧力には神経を使います。要するにスルメやビーフジャーキーを、前歯で「いーーーーっ」と引っ張るのが出来ないのです。同じ状態になったことのない人に説明しても中々分かってくれないのですが、実はパンというものも、生地に垂直方向に引っ張ると、「うにーーっ」と伸びはしますが、スルメほどではないにしろ意外と簡単には千切れないものなのです。ですから、前歯への前後方向の圧力を最小限にしようとするなら、上のトーストの例で言うとちょっと行儀悪いですが、焼けたトーストを縦ではなく横に持ち(パッケージに入っていた時の天面が右か左に来るように持つ)、手前の辺の右端か左端に噛み付いてその反対方向に顔を振るようにするとスムーズに剥ぎ取れます。ただしこの時上に書いたのと同様、予め横方向に半分のサイズにしておかないと、もとのパンと同じ長さの断片を咥えることになりますが。
ところで、クロワッサンやロールパンなど、平たい生地を重ねて行くような場合は別として、本来この手のパンには生地に方向性はないと思うのです。生地を手でこねたなら、多分方向性は出ないでしょう。ミキサーボウルや HB の場合だと、方向性が出るとしたら多分渦状になるのではないでしょうか。少なくともタテヨコにはならないと推測します。食パンでタテヨコが出るのは、どう考えてもグルテンの繊維が縦方向に生成しているからで、これは食パンの製造ラインの少なくとも最終段階で、立方体の焼き型に生地を押し出しているからだろうと推測します。

[カリッとこんがり]
前のエントリでの引用「大阪食の基礎知識」で、「関東は、塩せんべいに代表されるような、カタイ食品がお好きなようです。だから食パンも、関東では英米風のしっかり焼いたものが好まれ」とありますが、そのことの真偽はともかく、確かに筆者はご指摘のとおりせんべいは好きです。せんべいは好きですし、銚電を応援したい気持ちもありますが、濡れせんべいはちょっと… 味はいいのですが、カリッとしないせんべいというのはやっぱりちょっと… 
トーストだと上に書いた通り、英米風かどうかは知りませんがしっかり焼いたものが好きです。きっちり焼き色がつき、中まで火が通ったものがいいので、必然的に厚切りはダメです。こんな趣味は筆者だけかと思っていましたが、「関西には食パンの8枚切りがないと嘆く東京人が良くいる」とのことらしいので、関東ではそんなに珍しくないのかも知れません。
さて毎朝8枚切り食パンをポップアップトースターで濃い目に2枚焼くわけですが、焼けたものを皿の上に乗せると、乗せたそばから皿の、トーストとの接触面が結露してきます。トーストから出た水蒸気が皿表面で結露したものです。この結露がトーストに戻ってしまうことによって、トーストのうち皿との接触面のみが湿っぽくなってきます。トースト同士を重ねると、この場合は接触面同士が同じ温度ですから結露はしませんが類似のことが起きます。せっかく「カリッとこんがり」焼いたのにこれでは台無しです。最初は仕方ないことなのだと思っていましたが、筆者は子供ながらに考えました。それで出した解決法。少し冷めるまで、皿の上にトーストのテントを張る。皿の上で、焼けた2枚のトーストを、相互に立てかけて山を作っておくのです。トーストから水蒸気が盛んに出ているのはせいぜい焼きたての1分くらいで、その後は無視できるほどですから1分くらいはコーヒーでも飲みながら待ち、その後は山を崩して普通に皿に置き、普通に食べればいいのです。まだ水蒸気が気になるようなら、そして作法を気にしないなら、まだ着手していない方の1枚は、皿の上に普通におかないで、皿の外に、皿の縁にトーストの1辺をもたせ掛けるようにおけば皿の面との密着が防げます。これで2枚とも最初から最後まで「カリッとこんがり」状態を維持したままイケます。
さきほど PASCO のサイトを見たら、それに似たようなことが書いてありました。

パンのおいしい食べ方

おいしいトースト3原則

1. トーストは必ずあたためてからパンを入れる
パンを入れてからスイッチを入れると、トースターがあたたまるまでに、パンが徐々に熱を受け、水分が飛んで、パサパサのかたいトーストになってしまいます。トースターのスイッチを先に入れ、十分あたたまってからパンを入れてください。
2. トーストしたパンを冷たいお皿にのせては台無し
トーストしたパンはまだ水分の蒸発が進んでいます。せっかくのトーストを冷たいお皿にのせると、トーストが露を吸って、「ふにゃふにゃ」になってしまいます。お皿を使う場合は、トースターの上にお皿をのせて、温めておきましょう。
3. トーストしたパンは重ねて置かない
トーストしたパンの重ね置きは水分の蒸発を妨げてしまいます。お皿でなくかごにナプキンを敷いてのせるなどちょっとした工夫で、おいしくてお洒落な食卓を演出できます。

ブラボーですね。筆者のウチの場合、ポップアップトースターでしたので、1. は関係ありませんでしたが。今でこそググると世の中にはトーストホルダーなどというものが存在することが分かるわけで、きっと英米あたりでは随分昔から存在していたのでしょうけれど、そういうものを使うと、単にしゃれた食卓というだけでなく、少なくとも上の 2. の問題を解決できます。レストランのディナーでトーストが供されることはまずありませんが、暖めたパンが供されるときは大抵かご&ナプキンが用いられるのはやはり見た目のエレガントさだけでなく 3. の問題への対応なのですね。…子供の分際で同じような問題意識を持ち、それなりに対応策を考え出すとは、なかなかやるじゃないか、自分…

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2012年1月16日 (月)

Pullman loaf

筆者がワシントン駐在から帰国して約1年10ヶ月が経過しましたが、いまだにワシントンのネットコミュニティは良く見ています。と、そこで本当に非常に頻繁に出てくる話題にホームベーカリーがあります。どの機種が良いか、応用法、レシピ…
日本ではそんなにホームベーキングがポピュラーだったか? と思わず首をかしげてしまいます。10年以上も前、日本で確かにちょっとしたヒットになったことは筆者も記憶していますが、その時にブームに乗って買ったものの、その後さっぱり稼動せず、ただでさえ狭い日本のキッチンの場所ふさぎになっている、という話を良く聞きます。帰国後キッチン家電売り場を覗いて見ると、どの店でも数機種は置いてありますが、そんなに飛ぶように売れているようには見えませんから、やっぱり日本ではホームベーキングはそれほど活発ではないように見えます。

それがどうしてワシントンに行くと日本人は版で押したようにホームベーキングに熱心になるのか? 理由は簡単です。日本で売られているような食パンが食べたいからです。具体的な商品名を挙げると、

「超熟」(敷島製パン)
「超芳醇」(山崎製パン)
「本仕込」(フジパン)
「熟彩」(第一屋製パン)

などが該当するものと思われます。…思われますというのは、少なくともこれらの商品は筆者の最も嫌いなタイプのパンで、殆ど食したことがないのと、また DC でホームベーキングにいそしんでおられる方々に直接インタビューをしたこともなければ、そんな調査・統計も存在せず、全くの想像でしかないからです。ですが、書き込みをされている方々がどのようなパンを求めておられるかを文脈から読み取ることは難しいことではなく、基本的には「もっちり、しっとり」したパンを求めておられるのは間違いありません。で、確かにこんな生地のパン、それも四角い食パンなど基本的にはアメリカでは売られていないのは間違いなく、どうしてもこういうものを食べたければ日系食材品店に行くか、自分で作るしかないのです。

でも不思議ですよねえ。アメリカじゃやっぱり旨いお茶漬けが食えないとか、上物のホタルイカの沖漬けにお気に入りの日本酒が合わせられないとか、芋麹の芋焼酎が手に入らないとか、そういうのは当然です。しかし、話はその逆。パンなんて本来日本のものではないのだから、アメリカに行ったら本場のものが食べられる、ウレシイとなりそうなところ、逆なんですから。それだけ現在の日本の食パンは和食になってしまったということですね。

カレーも和食、ラーメンも和食、ハンバーグも和食、スパゲティも和食。みーんな和食。パンも、なんですね。

ではどうやってパンが和食になったのか。ウィキで「食パン」をひいてみました。

食パン

18世紀ごろ、イギリスでカナダ産の強力粉を原料とした、金型に入れて焼いた山型の食パンが製造されるようになった。

食パンと同様なものはイギリスにもフランスにもあり(もともと日本の食パンは海外のものを取り入れたものである)、イギリスパンは焼き型の蓋をしないため上部が盛り上がった山形のものであり(しかし、最近のイギリスの食パンは日本のものよりやや小ぶりで、あまり山形にこんもり盛り上がったものは流行っていない)、日本の食パンは焼き型に蓋をするため四角形である。フランスの食パンはパン・ド・ミと呼ばれ焼き型の蓋はするものとしないもの両方あり、やや小型である。

日本では4〜8枚程度にスライスして販売されているものが多いが、イギリスでは日本の8枚切りよりさらに薄いものが一般的である。

[日本での概要]
日本には明治初期にイギリスの山型白パンが伝わり、主に外国人向けに製造された。神戸では1918年(大正7年)の米騒動を期に、朝食として食パンが食べられるようになった。

戦後、サンドイッチを食べる占領軍兵士へのニーズから8枚切りにスライスした状態で角型食パンが売られるのが一般的となった。その後食パンの食感が日本人好みに調整されるにつれ、その厚さは地域によってまちまちとなり、主に近畿地方ではトーストにして食べるのに適した6枚切りや5枚切り・4枚切りなどの厚切りが定着した。

ヨーロッパでは水と塩だけで練られることが多いが、日本の食パンの生地はアメリカの影響を受けて、牛乳や脱脂粉乳で練られることが多く、バターなど油脂が添加されていることもよくある。そのため、日本の食パンの多くはヨーロッパでは菓子パンの扱いになる。

食パンの消費量は近畿地方が圧倒的に多く、近畿地区2府4県すべてが上位10都道府県内に入っている。またパン食の多い近畿地方では廉価品よりも高級品、薄切りより厚切りの方が多く売れる。

簡単に言うと、English bread が日本に導入されたのは明治初期だけれども、戦後米兵への対応がきっかけとなり一般化し、その後日本人向けに進化して行った、ということのようです。ところでこの説明の中に、筆者にとっては驚きの情報が3点ほど含まれておりました。それは以下の3点です。

1) 戦後米兵が欲したサンドイッチは8枚切りの食パンで作られていた(と読み取れる)
2) 関西では厚切り、関東では薄切りが好まれる
3) 関西の方が食パンの消費量が多い

1)については、相当意外でした。現在のアメリカでは、サンドウィッチと言えば hotdog や sub などの footlong 系のものが人気だと思います。プレッツェルのサンドやベーグルのサンドもあります。あるいは普通に club sandwitch の形式のものもありますが、その場合でも白い四角い食パンは使いません。上のウィキでは「イギリスでは日本の8枚切りよりさらに薄いものが一般的である」とありますが、アメリカでは8枚切りより厚かろうが薄かろうが、そもそもそのようなパンが存在していません(唯一の例外は、相当前のエントリで紹介しましたが、南米系のお店で見ることが出来る sandwich de miga です)。それが、戦後のアメリカでは、白くて四角い食パンのようなパンで作ったサンドイッチがごく普通に食べられていたと思われる記載になっているわけです。だとすると、寧ろ日本の方が 60 年前のパン文化の名残を良く保存しており、アメリカの方こそ戦後、もの凄い勢いでパンの文化が変わったことになります。

一体どういうことなのか、英語版 Wiki を見てみることにします(一部分のみ抜粋)。

Bread

Breads in different cultures
North America
米国における伝統的なパンとしては、コーンブレッドや、ビスケットなどの quick bread が挙げられる。コーンブレッドはコーンミールから作られるもので、地域により味や食感が大きく異なる。一般的に南部では白いコーンミールを好み、小麦粉や甘味料を殆ど加えないか全く加えない。鉄の鋳物のフライパンで焼くのが一般的で、外側がカリっと、内側はしっとりしているのが好ましい。北部では黄色いコーンミールが好まれ、小麦粉を半分程度まで加えることもあり、砂糖、ハチミツ、メープルシロップなどを加えることもある。このためコーンブレッドは南部のものよりも柔らかく甘いものになる。ホームメードの小麦パンも、英国同様、長方形の缶を用いて作られる。小麦粉とイーストで作られるロールパンもまた、良く知られた伝統的なパンであり、ディナーとともに食される。西部ではサワドービスケットが「カウボーイフード」として伝統食である。サンフランシスコベイエリアはカリっとしたサワドーで有名である。スプーンブレッドは別名 batter bread(衣パン)または egg bread(タマゴパン)と言い、コーンミールから作られ、コメおよび挽き割りトウモロコシを入れる場合と入れない場合があるが、ミルク、卵、ショートニングおよび発酵剤を混ぜ、ベーキング皿からスプーンでないとサーブできない程度に仕上げる。これは主として南部で良く行われている。20世紀までは(地域によってはその後も)、コーンミール以外の全ての粉は贅沢品であった。コーンブレッドが、小麦粉のパンよりもバラエティが多い理由はここにある。商業生産の観点からは、最も広まったパンは、ミルクを用いて若干甘く仕上げた、柔らかい生地で薄い皮を持ったものであり、通常スライスされた状態でパッケージされていた。皮つきの状態で食べるのが一般的であったが、好みや、午後の紅茶とともに食すフィンガーサンドウィッチなどのようにサーブの都合によって皮を除去して用いる場合もあった。Wonder Bread(商標)のように最も柔らかい部類のパンは、"balloon bread" と呼ばれる。白い "sandwich bread" が最もポピュラーではあるが、アメリカ人はさらに凝ったパンを求めている。地域によってはある国のバリエーションを取り入れ、例えばフランスのバゲット、アシュケナージ・ユダヤ・ベーグル、scali(ニューイングランドのイタリア風パン)、ネイティブアメリカの frybread(19世紀の再入植時の艱難の賜物である)、そしてデリでお馴染みのユダヤ・ライなどが挙げられる。

ちなみに日本語のウィキ「食パン」から English へ飛ぶと、こんなところに出ます。

Pain de mie

Pain de mie は、スライスしてパッケージされたタイプのパンである。"Pain" はフランス語でパンまたは "パン1斤" を意味し、"mie" は料理の世界では "パンの身" を意味する(パンの皮ではない)。英語で言う pain de mie は pullman loaf または長方形のサンドイッチブレッドと殆ど同じである。このパンには砂糖が含まれており、殆どのフランスのパンよりも甘く、しかし殆どのアメリカのパンほどは甘くない。このパンはサンドウィッチまたはトーストを作るのに用いられる。このパンを焼くときは、皮が泡立たないように蓋のある焼き型を用いる。蓋のある焼き型を用いない場合は、皮は切り離しても良い(工場生産ではパッケージ前にそうしている)。Pain de mie は丸または長方形の形で売られている。

ついでに、pullman loaf をクリックすると、当然ですがそこに出ます。

Pullman loaf

Pullman loaf は "sandwich loaf" または "pan bread" と呼ばれることもあり、白い小麦粉を、蓋付きの長細い焼き型を用いて焼き上げる。この種のパンに対するフランス語は pain de mie である。米国では多くの大量生産システムで作られたパンが pullman loaf に該当する。多くの場合正方形で、四辺は直線状の皮になっている。

"Pullman" の語は Pullman の鉄道車両のコンパクトなキッチンに由来している。Pullman 社の発明した正方形のパンを焼く蓋付きの焼き形は評判を呼んだ。Pullman loaf は、トップの丸い通常の loaf 2つ分のスペースで3つを置くことが出来、Pullman キッチンのスペースを有効に利用することが出来たのである。

なるほど。昔、小学校の給食で、たまに「イギリスパン」なるものが出ましたが、それは記憶では、確か上辺のみ円形、残り3辺は直線状の縦長のパンで、生地は普通の食パンと殆ど同じだったと思います。それにマーガリンを塗って2枚を合わせてサンドイッチ状にしてあったような商品だったように思います。今「イギリスパン」とググると、この商品にピンポイントでヒットするわけではありませんが、天面をドーム状にした立方体あるいは直方体状のパンがヒットします。ま、日本語ウィキで説明されているイギリスにおける食パンのことのようです。それが、アメリカで、何とあの Pullman 社の発明で天面のドームが平面にされてしまい、アメリカではそれが一般的になったと。日本では(たぶん)敗戦の影響もあり、アメリカからの pullman loaf が de fact standard になったと。米兵の需要がなくなったあとは、日本人好みに少しずつレシピが改良されていったと。一方、本国アメリカでは pullman loaf はいまだに広く用いられているけれども、もっと色々なパンが商業化され、楽しまれている、と言うわけですね。まあ筆者の目には「pullman loaf はいまだに広く用いられている」とはとても思えませんでしたが、地域によるかも知れません。

ところでだいぶ上に戻って筆者が驚いた話の 2) と 3) を。これに関してはまずこちらのサイトが面白いです。

大阪食の基礎知識

「人は、贅を尽くしたグルメな食シーンよりも、ごくありふれた朝食シーンに食欲を刺激される」、てなことを言ったのは、007シリーズでおなじみの作家、イアン・フレミング。確かに、たっぷりとバターを塗った厚切りトーストは、朝食の華。外はカリッ、中はふんわりという食感は、厚めに切った食パンでしか味わえない醍醐味ですね。ところが、この「食パンは厚切りが美味しい!」という嗜好も、どうやら関西ローカルの常識であって、ジャパンスタンダードではないらしいのです。

製パン業界の常識でいうと、関東では、厚切りパンは「非主流派」というのが実態です。東京から関西にやって来た人の中には、「関西には食パンの8枚切りがない」と嘆く方がよくいますが、確かに関西人は8枚切りの食パンは、朝のトーストとしてはほとんど食べません。「そんな薄いの、3枚ぐらい食べんと、食った気ぃせんがなー」てなもんで、普通は6枚切り、もっと厚いのが好きな人は5枚切りを買うのが西のスタンダード。それを裏付ける、データがあります。

山崎製パンの本年1月から8月までの販売データによると、静岡を境にして国内市場を東西に分けると、西日本は圧倒的に厚切りが多いことがわかります。厚切りの5枚切りは、西では38.9%もあるのに対して、東は0.3%とほとんど皆無。一方の薄切りは、圧倒的に東です。西では、8枚切りがわずか1.4%しかないのに、東ではなんと25.8%にのぼります。この比率は、他の大手製パンメーカーのデータでもだいたい似たような状況です。関西人は、お厚いのがお好きなんですね。でも、いったいどうしてなんでしょうか。

コテコテのイメージが強い関西なので、欧米イメージのパン食とは縁遠いように思われがちですが、意外や、もともと関西人は大のパン好きなのです。総務省の家計簿調査によると、一世帯当たりの年間購入量は食パン、その他のパン(菓子パンなど)とも神戸がトップで二位は京都。三位は鳥取ですが、四位大津、五位奈良、さらに和歌山九位、大阪十七位と、関西の都道府県が上位を占めています。なるほどパン好きはわかるとしても、ではなぜ関西人は厚切りを好むのでしょうか。

「根拠なき独断」とも言われかねないのですが、考察を展開してみましょう。

その1「厚切りのもっちりとした食感が、関西人好み」
関西人は、もっちりとした食感が好きです。うどんやモチ、お好み焼き好きは、それをあらわしています。ですから、食パンもやはり、薄切りのカリカリした食感より、厚切りの食感が好まれると考えるのが自然です。それが証拠に最近、「もっちり、しっとり」した食パンが関西を中心にヒットしています。「超熟」(敷島製パン)、「超芳醇」(山崎製パン)、「本仕込」(フジパン)、「熟彩」(第一屋製パン)などの製品で、一部の商品では、湯で小麦粉を練る製法で粘り気を出し、もっちりとした食感を生み出しています。こうしたブームの火付け役こそ、関西だったとか。逆に関東は、塩せんべいに代表されるような、カタイ食品がお好きなようです。だから食パンも、関東では英米風のしっかり焼いたものが好まれ、粉モングルメ好きな関西では、もっちり食パンが好まれているのではないでしょうか。
(後略)

筆者はあの「しっとり、もちもち」系の食パンが大嫌いなのですが、それは関西系の舌の持ち主ではないことの証なのでしょうか? トーストの厚みに関して言えば、確かに8枚切りがデフォルトで、受け付けるのは厚くても6枚切りまでですね。ま、これは好みというよりも育った環境がそうだったのでそのようにインプリンティングされたというだけのことのようにも思えますが。現在ではそもそも、「しっとり、もちもち」が主流の食パンそのものが嫌いですので8枚切りも5枚切りも関係ありませんが…
しかしまあ、湯で小麦粉を練って粘り気を出すとかなんとか。そんな工夫を 60年間も続けて今に至るわけですか。和食になるわけですわな。

パンの話はもう少し続けられそうなので続きはまた。

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2012年1月 2日 (月)

Toso-san

正月と言えばお屠蘇。筆者もお屠蘇なる単語は子供の頃から当然知ってはいましたが、正月に飲む日本酒のことをそう呼ぶのだと永いこと思っていました。しかも自分自身が子供の頃から見聞きしていた日本酒と言えば三醸酒。というわけで、どうしてもお屠蘇というととんでもなく不味い日本酒というイメージがついて離れなかったのですが、1990年代の半ばから毎年年末が近くなると「屠蘇散」が手に入るようになってそのイメージが変わりました。屠蘇散は、祝儀袋のようなものにティーバッグが一つ入った製品ですが、そのティーバッグの中身は生薬です。で、その祝儀袋の裏面の説明によると、筆者の記憶では、だいたい次のようなことが書いてあったと思います。

- 元旦、東を向いて年長者より順に飲み、その年の無病息災を祈願する。
- 作り方:屠蘇散一袋を清酒1~2合に1~2晩浸す。好みでみりんや砂糖を加えても良い。

ちょっと方角などに自信がありませんが、まあそんなところだったと思います。で、1990年代は毎年暮から正月にかけて仲間内大人数で年越しスキーに出かけていましたので、出かける直前に日本酒の4合ビンに屠蘇散2袋ほどと砂糖(和三盆)を仕込んで持ち込んでいました。そして紅白が終わって年が変わった段階で回し飲みをして馬鹿騒ぎをしておりました。馬鹿騒ぎは馬鹿騒ぎなのですが、それでも毎年研究は進めておりまして、要するにこれは薬用酒と言えるほど薬用成分は濃くないが、ヨーロッパに広く見られる  Benedictine DOM やら Campari やら Yellow Chartreuse やら vermouth やらのハーブ酒と同じではないかということで、日本酒を焼酎やジン、ウォッカに変えてみたのを持ち込んで飲み比べたりしたこともあります。

今でこそそんなことはしなくなりましたが、2011年末、東日本橋の商店街を歩いていて、今年は屠蘇散を入手していないことに気がつきました。とある薬店の店頭に屠蘇散が並べてあったので気がついたのです。そこで迷わず購入したのは初めて見るU社の製品でした。
裏面に処方は「山椒果皮、みかん皮、桔梗根、浜防風、桂皮、おけらの茎葉」とありますが、「山椒、陳皮、桔梗、防風、桂皮、白朮」と表記しないのは医薬品ではなく食品であると言いたいのか、あるいは日局に合致しないと言う意味なのか。筆者が毎年使用していたものの処方は記録がないので比較はできません。

ただ、屠蘇散の「意義」に関する説明は少し詳しく書いてあり、

- 屠蘇散は、新しい年の出発に当たって、新陳代謝の滞りを清掃し、身体を清健にして長寿をはかるという意味で処方されたものです。
- 元旦から三日、あるいは五日間、お屠蘇を酌む習わしは、遠い昔から今日まで伝えられております。東京、大阪、京都などの旧家では特に尊重される行事の一つです。
- 一家揃って酌むときは、年少の者から始めて、順々に年長の者に回し、幼童少年少女は新年を明識し、また年始客には、誰にも先ずお屠蘇を献じることにいたします。
- これは、きまりよい美風となり、薬を嫌って飲むことの出来ない人には、知らず知らず薬に親しませる助けとなり、さらに体質改善によって「病、未だ病まざるうちに是を治す」という精神の教えにも役立つでしょう。

とあります。驚くようなことが書いてあるわけではありませんが、なかなか含蓄があります。筆者の記憶と逆の部分もありますが、ちょっとウィキを見てみましょう。

屠蘇

屠蘇(とそ)とは、一年間の邪気を払い長寿を願って正月に呑む薬酒である。
(中略)
飲む人の順には地域間で差があるが、年齢の若い者から順に飲むのが正式である。これは中国の習慣からきたもので、若い者が毒味をするという意味があった。しかし日本では、明治もしくは昭和初期に家長から飲むことも行われるようになったようである。
(中略)
屠蘇散の初出は、一説には三国時代の名医・華佗の処方によるものと言われている。その処方は『本草綱目』では赤朮・桂心・防風・抜契・大黄・鳥頭・赤小豆を挙げている。現在では山椒・細辛・防風・肉桂・乾薑・白朮・桔梗を用いるのが一般的である。人により、健胃の効能があり、初期の風邪にも効くという。 時代、地域などによって処方は微妙に異なり、最近ではトリカブト(煎ってよく加熱しないと猛毒)やダイオウ(下剤としても使われる)など作用の強い生薬は使われない。

漢方薬と同様、ある人物の胃弱や風邪に効いたからといっても、他者にあてはめるのは危険である。白朮ひとつとっても、むくむほど水分滞留体質の人にはよいが、水分不足体質や水分代謝機能の高い体質の人が飲むと、炎症悪化や血行不良等につながる恐れがある。生薬や屠蘇散の処方に関する専門知識を有する者に、飲用の是非を尋ねることが望まれる。もしくは食用レベルにまで処方量を減らし、薄めることが無難である(疾病に対し医師より処方される医薬品漢方は、煎じ薬換算で=一日分量20g程度。これに対し市販の屠蘇散の一回量は1割程度の2g程度であるため、食用範囲であり、かつ医薬効能は見込めない”気休め”程度である)。

正月に屠蘇を呑む習慣は、中国では唐の時代に始まり、日本では平安時代からと言われている。宮中では、一献目に屠蘇、二献目に白散、三献目は度嶂散を一献ずつ呑むのが決まりであった。貴族は屠蘇か白散のいずれかを用いており、後の室町幕府は白散を、江戸幕府は屠蘇を用いていた。この儀礼はやがて庶民の間にも伝わるようになり、医者が薬代の返礼にと屠蘇散を配るようになった。現在でも、薬店が年末の景品に屠蘇散を配る習慣として残っている。

基本的には関西以西の西日本に限られた風習であり、他の地方では、単に正月に飲む祝い酒(もちろん屠蘇散は入っていないただの日本酒)のことを「御屠蘇」と称している場合もかなり多い。関西では年末近くになると一部の薬局・薬店でティーバッグタイプの屠蘇散が近年は売られている。日本酒や味醂または両方を混ぜ合わせた液体をコップなどの容器に注ぎ、好みに合わせて糖分を加える。袋に入った屠蘇散を一晩程度浸けて出来上がりとなる(生薬が原料なので当然の如く独特の香りと味がする為、好みは人によって分かれる)。

まず驚いたのはオリジナルの処方です。大黄に烏頭ですと? そんな下薬を「一年間の邪気を払い長寿を願」う目的で服むとはちょっと信じられません。何か別の目的があったのではないでしょうか。ま、上にも書いてありますが、大黄と烏頭が配合されていても全量で 2g 程度なら確かに気休め程度かも知れません。
飲む順序については、筆者の記憶は年長者から、U社のは年少者からで、ウィキでは地域差があるということですが、どちらも東京の会社の製品ですので、これは単に依拠する文化のバラつきと言ったところでしょうか。
しかし何で薬店が年末に屠蘇散を配るのかようやっと理解しました。もともとが医者が薬代の返礼で、薬店の場合は一年間の顧客への感謝の印なのですね。確かに毎年筆者が入手していたのも年末の顧客への挨拶用で非売品でした。
それと生薬の入らないただの日本酒をお屠蘇と呼ぶ理由も理解しました。

さて年末に買って仕込んだU社の屠蘇散、2012年の元旦に飲んで見ました。いつものものに比べて、陳皮と桂皮が強めに出ているものと思います。フルーティでした。結構違うものだということが分かりました。例年の屠蘇散については、こんな話も聞いたことがあります。配合している生薬のうち、どれかについては焙煎をかけることがあるのだそうです。焙煎をするのとしないのでは風味が全然違うのだとか。配合する生薬のロットによっても違うことも十分あり得る話です。

さて元旦に屠蘇散を飲んでは見ましたが、処方の本来の目的通り新陳代謝の滞りが清掃されるでしょうか? それとも単に正月の食べすぎ・飲みすぎで終わる? 2日と3日は駅伝観戦で合計10時間もテレビの前から動きませんからねえ・・・ 体調管理には普段以上に気をつけないと。

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2011年12月21日 (水)

Brining

先だってホームパーティーを開きました。トランクルームからオーブンレンジが戻って来たのですが、それが 30 リットルクラスと比較的大きめのものだったので、holiday season ということもあり、roast turkey をやることにしました。参加人数はホストも含めて大人 11 人。それに対して用意したターキーは 8 ポンド強ほどのもの。アメリカなら 11 人に対して 8 ポンドじゃ全然釣り合いが取れない小サイズですが、ここは日本。ターキーしか出さないわけではありませんし、left over を前提としない食文化ですし、そもそも日本の家庭にしては大きめのオーブンとは言え、30 リットルクラスでは 10 ポンド以上のターキーなど焼けません。8 ポンドだって、慎重に庫内とターキーの大きさを測った上で購入し、本来想定されていない天板の置き方をしてようやく焼いたという状況です。いやあ日本で roast turkey を焼くとは思いませんでした。レシピはだいたい一昨年と同じです。ただし、ここ日本では冷凍していないターキーなど売っていませんから、Alton の direction 通り、数日前から計画的に解凍・仕込みが必要です。今回はこんなスケジュールでした。

12/6夜:購入&解凍開始
12/9夜:brining 開始
12/10昼:roasting 開始
12/10夕:roasting 終了

ケーキもそうですが、オーブンの「焼きぐせ」が分からなかったので想像よりもやや余計に焼き時間がかかりましたが、パーティ終了予定時刻になっても焼きあがらないという事態にならなくて良かったです。
あ、レシピはほぼ同じとは書きましたが野菜スープストックは野菜ジュースで代替しました。V8 の 1/2 ガロンボトルなどあればそんなのでもよかったのですがここは日本でやっぱりありませんので、なるべく果物っぽくない、青臭いやつをチョイス。V8 なら塩分も結構入っているので一石二鳥と思ったのですけれど。

そして今週末はクリスマス当日。当日はアメリカ同様、特に人を呼んでパーティをすることもなく、ウチで過ごす予定ですが、また何か poultry を焼こうと思いました。が、またターキーというのも能がありませんし、ただのチキンでは面白くありません。しばらく思案して、Peruvian chicken、またの名を pollo a la brasa を作る気になりました。なお今回は上のエントリとは違うレシピを少しだけ参照します。

Peruvian Roasted Chicken with Yellow Potatoes - Pollo a la Brasa

少しだけ、というのは一番最初の手順として

[オプションで]
内臓を取り除いたチキンを 12 時間冷蔵庫で brining した後、取り出して洗う。なお brining についてはこちらを参照。

とある部分です。今回のレシピはこのようにオプションで brining をする点が違いますが、その後、半日~1日ほど Peruvian マリネに漬け込んでからローストするのは前回と同じです。さてターキー同様また brining という技法が出てきましたが、これは一体何でしょうか。上のリンク先を見てみましょう。

Brining Poultry
By Derrick Riches, About.com Guide

幸いなことにこれまでに、あなたがどんな肉をどんな風に料理しようとしていたとしても、brining が最も重要なことであることであることをご理解いただけたことと思う。グリルや燻製など、dry heat(油や湯を使わない加熱法)の場合は特に重要である。従って、バックヤードクッキングの場合は、まず brining から始めることになる。

ちょっとだけサイエンス:Brine は塩水である。肉よりも塩分の濃い brine の中に肉を置くと、水分が細胞壁を越えて肉の中に入り込み、水分を与える。この事実は、トリムネを数時間、塩水の中に置き、その前後で重量をチェックしてみると確認することが出来る。トリムネは重くなっているのだ。重くなった分の重量は入り込んだ水の重みである。水分が加わったこと以外に、塩分がタンパクを変性させ、肉が柔らかくなるという効果もある。

計量:標準的な brine は、水1ガロンに対して食卓塩1カップ(訳注:アメリカの1カップは 240ml)である。水に容易に溶ける Kosher salt または粗塩の場合は、容積あたりの重量が小さいので、ガロンあたり 1.5 カップ程度を用いる必要がある。これはヨウ素を含まない通常の塩を前提としている。生卵が浮くようであれば正しい濃度の brine である。

技法の基礎:Brining しようとする鳥を適当なサイズの容器に入れる。鳥が隠れる十分な量の水を注ぎ、さらに3インチ分の水を注ぐ。注いだ水の量を測り、必要な塩の量を計算する。予め計量した十分な量の沸騰水をボウルにとり、塩を加えて溶かす。これを容器に加え、残りの水(冷水)を加え、鳥を加える。これで brining が始まる。所定の時間になったら、鳥を取り出し、洗い、brine は捨てる。これで調理の準備が完了である。Brine は捨て、全てを良く洗う。

時間:Brining 時間は長すぎると良くない(しょっぱくなりすぎるなど)。従って、同じ間違えるなら、長すぎるよりは短すぎる方が良い。一般的に、鳥類の brining は、1ポンドあたり1時間が目安である。しかしながら、肉の厚さや質感は重量よりも重要である。丸鶏の場合は6時間から 10 時間であるが、同じチキン1羽分でもカットしてあれば4時間を越えてはならない。Cornish hen なら1時間か2時間で十分であるが、大きなターキーだと少なくとも 24 時間は見なければならない。

全ての料理と同様、brining において自分の味を決めるには試行錯誤が必要であり、フレーバーを付与するのにハーブ、スパイス、野菜類などがある。私のレシピを参考にしていただいても良い。

とまあこういう話なわけです。ちょっと計算してみますが、brine の標準的塩分濃度ですが、水1ガロン(3.875リットル)に対して食卓塩1カップ(240ml)です。塩を重量に換算するのに、比重が必要ですが、それは財団法人塩事業センターのサイトから、1.3 g/cm3 とします。そうすると、

240 × 1.3 / 3875  = 0.08

で、塩分濃度8%ということになります。結構濃い塩水です。で、直感的に思ったのは、こんなに濃い塩水に肉をつけたら、肉に水分が入り込むのではなくて、逆に肉から水分を奪うことになるのではないか? ということでした。魚を塩焼きにしようとして塩をふってしばらく置いておくと、塩の周りに水が浮き出てきたりするのと同じで、要するに「ナメクジに塩」状態になりはしないか? と思ったわけです。ついでに Wiki も調べてみました。

Brining

料理においては、brining とは調理前に肉を brine に漬けて置くことで、マリネに類似した処理法である。

Brining は調理前に肉の筋組織の細胞に浸透圧を利用して水分を付与し、また変性により細胞が調理中もその水分を保持することで調理した肉に潤いを与える技法である。肉の細胞の周囲に存在する brine の塩濃度は細胞中のそれよりも高いが、細胞中の溶液はその他の溶質において brine より高濃度である。これにより塩イオンは細胞中に拡散する一方、細胞質中の溶質は細胞膜を通じて brine 中に拡散することはない。結果として細胞中の増加した塩分濃度のため、浸透圧により brine から水分が細胞中に吸収される。細胞中に流入した塩分はまた細胞中のタンパクを変性させる。タンパクは凝集し、マトリクスを形成し水分をトラップし、調理中も水分子を保持する。これにより肉から水分が失われるのが防がれる。(後略)

どうもなるほど、と腑に落ちた感じがしません。細胞膜が半透膜なのは有名な話ですが、だからこそイオンを通さないのでは? 「塩イオンは細胞中に拡散」せず、細胞外の方が塩イオンが高いのだから、ナメクジ状態になるはずなのです。ただ、brine の塩分濃度は8%で、濃ければ濃いほど良いわけではなく、細胞内よりは高濃度だが、その他の成分も含めれば細胞内より低濃度である、という点がポイントなのかとも思いましたが、そうでもないようです。

筆者の考えたポイントは、「漬けすぎるとしょっぱくなる」という点です。つまり、細胞中に実際に塩が入り込むという点。要するに細胞膜は、半透膜ではないのです。では高校で習ったことがウソ? そんなこともないでしょう。多分こういうことでしょう ---お前はすでに死んでいる・・・。

しばらく前に魚の鮮度のエントリを書きましたが、市場に流通している丸鶏やターキー、ましてや冷凍の whole turkey など、その構成細胞は一つ残らず完全に死んでいるはずです。細胞膜の膜電位やイオン勾配なんて全くなくなっている筈ですし、イオンチャネルどころか、そもそも膜構造が保たれているのか怪しいわけです。だから恐らく、細胞内というより肉の塊中の塩濃度より濃い brine さえ作れば、それがどんな濃度であれ、浸透圧ではなく単なる拡散(じっさい、Wiki でも正しく diffuse という単語を用いています)によって肉に塩味がつくことになると思います。ただ、塩味のつくスピードは、濃度勾配に比例するでしょうからある程度の濃さは必要で、しかしコントロールしやすい濃さに収まっている必要もあり、よって標準的な濃度が8%というところなのではないでしょうか。
で、肉の塊の中の塩分濃度が高まったので、その周囲が本物の半透膜でなくとも周囲から水分を集めることになるのは確かでしょう。またとりはむの原理と同じくアクチン=ミオシン系かどうかは不明としてもタンパク変性・凝集により集めた水分の保持効果があるというのも頷けます。

Brining は筆者も駐米時に初めて知った技法です。鳥類の前処理に良く用いられるようですが、ポークなどにも用いられるようです。Wiki の日本語版には項目もありません。やっぱり肉の取り扱いは欧米の方が進んでいる…のでしょうか…。

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2011年12月11日 (日)

Glühwein

昨日六本木ヒルズのクリスマスマーケットに行って来ました。特に目当てがあったわけではなく、散歩がてらという感じでしたが、ウェブで事前情報を調べて気になっていたのがグリューワインとマグカップでした。ヒルズのサイトによると、

赤ワインとスパイスでつくる温かいグリューワインは、それぞれのマーケットオリジナルのマグカップで飲むのが定番。クリスマスマーケットに欠かせないアイテムです。毎年シリーズで集めてみてはいかがでしょうか。

だそうで、今年のデザインも結構悪くないので、ウチを出るときからほぼこれを買ってグリューワインを飲むつもりでいました。ところでそのグリューワインですが、グリューワインという単語自体、このサイトを見て初めて知りました。要はホットワインなんでしょ、と思っていたわけですが、実際に現地で飲んでみると、これ本当にワインなの? というくらい飲みやすいものでした。が、どう考えても赤ワインを温めただけじゃないよな、と思ってケータイで google.com から gluh wine とググって見ると、Wiki の項目としては Mulled wine なるものがヒットしました。そこを開けてみると、次のようになっています。

Mulled wine

Mulled wine の色々なバリエーションはヨーロッパで広く知られているが、通常は赤ワインにスパイス類を加え、温かくして飲むのが一般的である。冬の間、特にクリスマスおよびハロウィーンの頃に広く飲まれている。

[Glühwein]
Glühwein はドイツ語圏の国々およびフランス・アルザス地方で良く飲まれている。クリスマスの頃の飲み物である。通常赤ワインをシナモンスティック、バニラビーンズ、クローブ、柑橘類および砂糖とともに熱して製する。ドイツではブドウ由来のワインの代わりにブルーベリーワインなどのフルーツワインが用いられることは滅多にない。Glühwein はそのままあるいは "mit Schuss" (ショットとともに)として飲むが、後者はラムかリキュールを加えたものである。フランス語名は vin chaud (hot wine) である。

現場でグリューワインを飲みながらスマートフォンでない普通の Foma ケータイで読んだのですが、「何だ、要するに昔良く作ったホットワインか!」と合点がいったわけです。まさにそういう味でした。筆者バージョンの即席ホットワインですと、ホットグラスに適当な赤ワインを入れ、クローブパウダーをほんの少々散らし、コアントローを適量入れてチンするだけです。原型のクローブだと後で取り除くのが面倒ですし、上白糖のべたべたした甘さが嫌いだからです。ついでにコアントローから柑橘系のフレーバーも付与されますし。

現場では英単語 mull とドイツ語 glüh の意味が不明なままだったのですが Foma ケータイではもうそれ以上調べるのが面倒で、改めて先ほど PC から調べてみた次第です。筆者の辞書によると、

mull:(ワイン・ビール・リンゴ酒などに)砂糖と香料を加えて温める
glühen:i①赤熱する、白熱する… 赤々と輝く… ③熱くなる、t①真っ赤に焼く… ③熱くする…

なあるほど。英単語の mull というのは面白いですね。そんな意味の動詞が存在するとは。まあ日本語の場合でも日本酒を温めることを単に「温める」とは言わずに「燗をつける」という専用の用語があるので英語の方が深い酒文化があるとまでは言わないでおきます。で、面白いなあと思ったのが、フランス語だと、単に vin chaud で、英訳すると上記のとおり単に hot wine です。Mull に相当する単語はないのでしょうか。で、ドイツ語だと heiß になりそうなところ、今度は glüh です。赤ワインだから「赤」のイメージのある単語を持ってきているのでしょうか。でもそこに「砂糖と香料を加える」という意味はありません。

ヒルズのサイトではグリューワインと言っていましたが、日本語では「ホットワイン」という単語の方がまだ勢力が強いようです。google.co.jp で検索すると前者が 283,000 件ヒットなのに対して後者は 2,790,000 件。一方逆に google.com で hot wine を検索すると、1,800,000,000 件ヒットしますが、検索結果を見ると、mulled wine としてヒットしているのが明らかに優勢です。英語で hot wine と表現したら通じないということはないと思われますが、「あつ燗」と言わずに「熱い日本酒」と言うのと同様、なんだか気の利かない表現に聞こえるのではないでしょうか。ということで、日本語の「ホットワイン」は、和製英語とは言い切れないものの、mulled wine の「日本の方言」みたいなものかも知れません。まあグリューワインにしても、本来のドイツ語読みなら「グリューヴァイン」に近くなるはずで、「ドイツ語の英語読み」なわけですが。ではそのホットワイン、日本のレシピの一例を。

「ホットワイン」で寒さを吹き飛ばす! by 橋本 伸彦, on allabout.co.jp

酸味のしっかりしたワインを温める「ホットワイン」、じつは適当に作るとかなり飲みにくいものになります。コツはいくつかあるので作り方で順を追って見ていきますが、何よりワインを加熱し過ぎて香りが台無しになってしまうことが多いものです。ちょうどホットミルクと同じ適温の60度ぐらいに温めれば、アルコールや風味が飛んでしまったり焦げ付いたりという失敗はありません。それなら電子レンジで温めるのがいちばん簡単。

「ホットワイン」の材料・分量(1人分)

赤ワイン 150ml
水 50ml
グラニュー糖 大さじ1杯
クローヴ 2粒
シナモンスティック 1本
オレンジかミカンの皮 少々

「ホットワイン」の作り方・手順

1:まずワインと湯を合わせ砂糖を加えてかき混ぜます。水はワインの味を和らげて、ソフトな口当たりにしてくれます。砂糖は酸味を和らげて飲みやすさとコクを与えます。砂糖を減らすと水っぽく酸っぱい味になるので注意!

2:クローヴを加えます。ホール(原形を保ったもの)がなければパウダー少々でも構いません。この飲物らしい香りの基本となるので、これだけは省略しないで欲しいもの。好みでシナモン、カルダモン、ジンジャー、コリアンダーシードなどの乾燥スパイスを加えてもいいでしょう。

3:もうひとつワインの風味を引き立てるのに欠かせないのが、柑橘系の果物の香り。ここでは無農薬ミカンの皮を乾燥したものを使います。生のオレンジがあれば、仕上げにスライスを浮かべるだけでもおいしいものです。オレンジジュースを垂らすことでも代用できます。

4:耐熱グラスやマグカップなどに入れて、電子レンジで温めます。カップに入ったミルクを温める設定ボタンがあればそれを使って下さい。温度センサーで仕上がり温度を設定できる場合は60度に設定します。人数が多い時など鍋で温めても構いませんが、ごく弱火で混ぜながら。シナモンスティックでかき混ぜ、香りと雰囲気を楽しんで飲みます。

では Food Network から mulled wine レシピを2例ほど

Mulled Wine by Ina Garten, on foodnetwork.com

[材料](8人分)
アップルサイダー: 4 カップ
赤ワイン(カベルネソービニオンなど):750 ml ボトル 1 本
はちみつ: 1/4 カップ
シナモンスティック: 2 本
オレンジ: 1 個、ゼストおよび果汁
クローブ(ホール): 4 個
スターアニス: 3 個
オレンジの皮: 4 個分。飾り用

[作り方]
サイダー、ワイン、はちみつ、シナモンスティック、ゼスト、果汁、クローブおよびスターアニスを大きめのソースパンに混ぜ、沸騰させ、10 分間弱火にかける。マグカップに注ぎ、オレンジピールを飾る。

Mulled Wine by Alton Brown, on foodnetwork.com

[材料](10 人分)
オールスパイス(ホール): 6 個
ブラックペッパー(ホール): 大さじ 1
スターアニス(ホール): 2 個
シナモンスティック: 3 本
ショウガ(スライス): 1 インチ長 1 個
オレンジゼスト: 大 3 片
レモンゼスト: 大 3 片
赤ワイン: 750 ml ボトル 2 本
はちみつ: 3/4 カップ

[作り方]
コーヒーパーコレータのバスケットに、オールスパイス、ペッパー、スターアニス、シナモンスティック、ショウガ、柑橘類のゼストを入れる。ワインとはちみつをパーコレータに注ぎ、バスケットをセットし、カバーして 1 ~ 2 時間抽出する。熱いうちに供する。

日米どちらも材料は大して違いませんが、アメリカ版レシピはどちらも沸騰させてますし、Alton に至ってはそんなに長時間? という抽出時間です。Ina のように 10 分くらいならともかく、1 ~ 2 時間も加熱したら、それこそアルコール分は全部飛んでしまうのではないでしょうか。日本のレシピでは沸騰させない代わりに(代わりということもないでしょうが)水を加えています。
しかし最も味を左右するのはワインそのもののはず。橋本氏は

ワインは原則的に冷やしておいしいように造られているので、温めて飲む場合には高価なワインを使っても真価を発揮しにくいのです。味にうるさい向きでも1本千円程度のワインで充分おいしく飲めます。

と述べていて、これには筆者も agree です。ただ、ぶどうの品種や産地はどうしたらいいでしょうか。上で引用したうち、Ina だけはカベルネと言っていますが、フランスよりもカリフォルニアかオーストラリア、そしてその中でも橋本氏と同様、安価なもので良いと思います。基本的にはあまりボディの重過ぎないものが良いと思うからで、筆者のグリューワインの概念からすると、一定の値段(おおむね 2000円くらい)以上のカベルネはボディが重過ぎるように思います(仏米豪どこ産でも)。そもそも、カベルネというのがどうなのでしょうか。筆者ならメルローかシラーをチョイスします。軽すぎず重すぎず、ちょうどいいのではないかと思います。が、よくよく考えたら、本場ドイツではどうなのでしょうか。ドイツの赤ワインというのがそもそもあまりなじみがないわけですが、ドイツワイン事典によると、

Spätburgunder (シュペートブルグンダー)
シュペートブルグンダーは、ドイツの赤ワインの代表品種である。フランス語では「ピノ・ノワール」と呼ばれ、フランス・ブルゴーニュ地方に由来する。ドイツでもすでに千年以上前から栽培が行われており、ドイツの伝統的な赤ワイン品種と言える。主に、バーデンの、特にカイザーシュトゥール地区とトゥーニベルク地区で栽培され、その他フアルツ、ラインヘツセン、ヴュルテンベルク、ラインガウ、アールでも栽培されている。

だそうで、ドイツではピノが主流と考えていいらしいです。なるほどそれなら少なくともメルローやシラーより重くなることはないでしょう。

昨日はクリスマスマーケットの脇に設けられたテーブル席でグリューワインを飲みながらマーケットを眺め、NYC のクリスマスマーケット(とは言いませんが)を懐かしんだり、日本でもこんなイベントが開かれるようになったんだなあと感慨深く思ったりしました。会場にはドイツのどこの都市のか忘れましたがクリスマスマーケットのポスターなぞが貼ってありました。なんとも魅力的な景色でしたが、マーケットの写真の中にごく小さな日本語らしき文字が。良く見ると「カップ返却口」と書いてあるようです。グリューワインを飲むマグカップの返却口だと思うのですが、そんなところにまで日本人観光客が行くのですねえ。筆者もいずれ行ってみたいと思います。

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2011年12月 8日 (木)

Konnyaku

1ヶ月ほど前、知人のブログで、山武には素晴らしいこんにゃくがあり、いままさにその収穫時期であることを知りました。そしてその(当時は山武町)こんにゃくは、美味しんぼの57巻で、山岡がわざわざ食べにきたものだというのです。筆者は美味しんぼは残らず読んでいますが、この話は全く記憶に残っていませんでした。1年半以上山武に住んでいましたが、思い出すことも1度たりともありませんでした。それが山武を去る直前になってそんな重要なことを忘れていたことに気づかされるとは… 迂闊にもほどがあるというものです。実際地元ではさほど特別騒ぎ立てててはいないのです。57巻が出た当時は結構騒いだかも知れませんけれども。ググってみても、しつこくググれば若干ヒットする程度で、JA 山武郡市の直営所にまんまるのこんにゃくが売られているそうですが、それが問題のブツのようです。今度行ったら見てみます。

ところで、美味しんぼのあらすじをもう少し詳しく見てみると(57巻そのものは筆者の山武の家の倉庫に寝ていますが、手元にないので参照できません)、

山岡はこれからが本番だと言って皆を千葉県山武町に連れ出す。そうして、その地で、県立高校の永田先生とコンニャク作りの名人の山口の説明で、コンニャクの製造工程を見学することになった。そして、山口の作ったコンニャクの美味しさに驚いた。さっき、山岡の家で食べたコンニャクとは、まるで別物だった。さわやかな香りに、心地よい感触。驚きの美味しさだった。

とあります。永田先生というのは恐らくこの方だと思われます。

永田 勝也
ふりがな:ながた かつや
肩書き:野生ブドウ・食品加工研究
現住所:千葉県
「刺身コンニャク」(ワラ灰で作る正しいコンニャク)
市販のコンニャクは苛性ソーダや消石灰などの薬品で作るため、エグ味がありコンニャク本来の風味が損なわれてしまいます。日本古来から伝わるワラ灰(木草灰も含む)の灰汁(アク)で作る「刺身コンニャク」は今や継承者が無く、その技術が失われようとしています。「正しいコンニャク」作りを通して日本の偉大な食文化を見直しましょう。
☆『美味しんぼ』(小学館)No.57 第4話「コンニャク文化」参照。

ですので、上で言っている「製造工程」というのは、「藁灰こんにゃく」に相違ありません。その様子は漫画に描かれているかも知れませんが、とある方がブログで紹介しています。

藁灰こんにゃくが出来るまで

この方は東金で無農薬野菜、手作り加工食品を中心とした八百屋さんをなさっている方ですが、去年の秋に山武の森地区にこんにゃく芋を収穫に行ったときのエントリがこちらにあります。なんと。意外にも森地区なんぞで栽培されているとは。冒頭の知人のブログの写真も、あれは森地区の畑なのでしょうか。

しかしながら、森地区ではこんにゃく芋は栽培しているけれども、こんにゃくに加工しているのはどこなのか、ネットではどうにも探しきれないのです。単純に「山武×こんにゃく」でググると、蓮沼の橋本こんにゃく店というのがヒットしますが、このお店がどういうお店なのか全く分かりません。上の八百屋さんは東金の方です。では、山武の名産こんにゃく芋から作った藁灰こんにゃくは、山武市内で作られているのかどうなのか? JA 山武郡市で売られているのはどこ製なのか? また藁灰こんにゃくなのか? 実際に行かないと分かりません。ここまでローカルな話だとインターネットの守備範囲外です。

実は筆者は先日山武から東京に戻って来たのですが、12/4 に成東で開催された「山武市産業まつり」に行ってみました。そこで地元の商店の見るからに自家製のこんにゃくが売られていたので、それが藁灰こんにゃくかどうかは分かりませんでしたが、迷わず購入して来ました。それを昨晩、刺身ではありませんでしたが食してみたところ… 今まで食べてきたこんにゃくは一体なんだったんだ、というインパクト。筆者が食したのと美味しんぼで皆が食したのでは違うこんにゃくでしょうが、感想はまさに一緒です。普通のこんにゃくとは全く別の食材と言って良いでしょう。こんにゃくの概念が変わりました。

こんにゃくと言えば群馬かと思っていましたが、なんと山武とは。収穫までに数年かかる芋を無農薬で育て、藁灰でこんにゃくに仕上げる。ちょっと簡単には手に入らない超レアものの超高級品ですね。

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2011年11月25日 (金)

Moo Shu Pork

今日の昼飯は、会社の近所の中華料理屋で「定食」を食べました。なんとなく中華丼なモードだったのでこの店に出かけて来たのですが、店の前まで来て見ると、こんな張り紙が。

2011112512100000

今日の定食は「木須肉(ムースーロー)」だそうで、キクラゲ、白菜、卵のうま煮である旨の説明が書いてあります。キクラゲ、白菜、卵のうま煮なら、中華丼のあんと殆ど同じじゃん、と思ったのと、ほお~、日本にも木須なんてあるんだ~、面白え~、と思ったので予定変更で「木須肉」定食を注文することにしました。

筆者がこのメニューを知ったのはアメリカ駐在中のことで、2008年には American Chinese Cuisine というようなエントリを書いていて、そこに moo shu は出てきます。日本語ウィキにも木須肉のページはありますが、英語のページとは内容が全然違うので英文 Wiki のページを引用してみます。

Moo shu pork

Moo shu pork (moo shi pork、mu shu または mu xu pork とも書かれる)は北部中国、恐らくは山東省起源の料理である。1960年代になってから初めてアメリカの中華レストランに登場した American Chinese であると考えられている。

[説明]
本来の中国バージョンでは、moo shu pork は豚肉のスライスまたは細引き、卵、きくらげのスライス、ワスレグサのつぼみをごま油かピーナツオイルで炒めたものである。タケノコのスライスを加えることもある。ショウガ、ニンニク、エシャロット、しょうゆ、料理酒(通常は黄酒)で味付けをする。
アメリカでは 1966年に発行されたニューヨークからワシントン DC にかけてのガイドブックに記載があることから、その頃ニューヨークおよび DC の中華レストランで発生したと見られている。マンハッタンにおけるそれらの最初の店のうちの一つは、1960年代ニューヨークの非広東料理店として最も良く知られた店の一つである Pearl's である。ニューヨークタイムスの 1967 年の記事では、マンハッタンにおけるその他の例としては Mandarion House、Mandarin East および Great Shanghai のオーナーであった Emily Kwoh であるとしている。この皿はまたマサチューセッツ州ケンブリッジの北京スタイルレストランの草分け Joyce Chen's の初期の頃にも供された。この頃、この料理は本来の方法で調製されてはいたが、きくらげとワスレグサが入手困難であったことから、レシピは改変されていた。改変されたレシピにより、北米では次第にグリーンキャベツ、スクランブルエッグ、ニンジン、ワスレグサ、きくらげ、エシャレット、もやしが使われるようになっていった。シイタケ、チンゲンサイ、エンドウマメ、ピーマン、タマネギ、セロリなどが用いられることもあり、黄酒に代えてドライシェリーが用いられることは多い。ワスレグサともやし以外の野菜は調理前に縦方向にスライスし、薄い短冊状にするのが一般的である。
これらの食材が一般的であるが、料理人・レストランにによっては様々なレシピが存在する。本来の中国バージョンおよびアメリカンバージョンとも、グルタミン酸ナトリウム、塩、砂糖、コーンスターチ、白コショウも用いられる。あまり伝統的でない北米のレストランでは、アメリカ人の顧客に馴染みの薄い食材であるきくらげとワスレグサは完全に省略されてしまう。アメリカ版レシピではキャベツとニンジンの細切りがかなりの部分を占めるため、調理時間を節約するために、袋詰めコールスローミックスがしばしば用いられる。
豚肉が最も一般的に用いられるが、豚肉に代えて他の肉やシーフードも用いられるが、いずれにしても複数種を混合して用いることはない。豚肉に代えて鶏肉を用いた場合は moo shu chicken、同様に beef、shrimp と呼ぶ。肉を用いない場合は moo shu vegetable または moo shu tofu と呼ぶ。

[供し方]
Moo shu pork は hoisin sauce(海鮮醤)および幾つか(通常4枚)の温かく蒸した薄くて白いトルティーヤに似た小麦粉製の"moo shu pancake(中国名: 木须饼, pinyin: mù xū bǐng)" 、"Mandarin pancakes"、または báo bǐng (薄饼, literally "thin pancakes")と呼ばれるラップを添えて供する。これらは北京ダックに添えられるものと類似している。20世紀後半に入り、北米にある伝統的でない American Chinese レストランでは、より薄くて破れやすい伝統的な moo shu ラッパーに代えてメキシカンスタイルの小麦粉トルティーヤを供するようになった。
Moo shu pork は moo shu pancake に包み、ソフトタコを食べる要領で手で食べる。中華レストランでは自分で巻いて食べることが出来ない客のためにウェイターが巻こうとするが、客が自分で自分のパンケーキを巻くのが通常である。最初に hoisin ソースを少量パンケーキに塗り、スプーン1~2杯の moo shu pork をパンケーキ中央に置く。パンケーキの底を少し折り(中身が外に流出するのを防止するため)、パンケーキを折るか左から右へソフトタコの要領で巻く。ブリトーの場合とは異なり、頂部は折り返さず、また中身が流出する部位である頂部は通常その場で食べてしまうため、中身が流出する危険はない。この料理は水分を多く含むため、パンケーキを巻き、食している間はパンケーキがすっかりぬれてしまわないように注意を払う必要がある。
中華の麺料理のように、moo shu pork は炊飯とともに供されることはない。

[語源]
この料理の語源には2つの主だった説がある。
1つの説は木犀肉 (pinyin: mù xī ròu)によるものである。最後の字「肉」(ròu) は "meat" を意味し、皿中の豚肉に対応している。前半の「木犀」(mù xī)は Sweet Osmanthus(キンモクセイ)の名前である:黄色または白色の沢山の小さくて芳香を放つ花をつける装飾用の潅木である。
キンモクセイの花はスクランブルエッグに似ている。スクランブルエッグは黄色と白色の混じった花を想起させるため、木犀 (mù xī)はこの皿を調製するときのスクランブルエッグの詩的な用語である。加えて、中国の儒教上の記念日で "egg" を意味する中国語 (蛋; pinyin: dàn)をこの料理で避けたのは、他の中国語でこの単語を多用しているからである。かようなわけで dàn という単語が "Sweet Osmanthus"(キンモクセイ)で婉曲的に置き換えらることとなった。この場合、この料理名の最初の文字「木 (mù) 」は「木耳 (mù'ěr, "wood ear fungus、キクラゲ"の意)」の略であり、「樨 (xī, "Sweet Osmanthus tree、キンモクセイ")の意」は「桂花 (guíhuā, "Sweet Osmanthus flower、キンモクセイ"の意)」の略である。
2つ目の説は、アメリカの中華レストランでのこの料理の一般的な表記法が「木须肉 (pinyin: mù xū ròu)」であるという点にある。2番目の字「 须 (xū)」の意味は "whiskers"(ひげ)であるが、「須」の他の意味と区別するため、補完的な「偏」や「つくり」を加えて「鬚」のように書くこともある。初期の American Chinese レストランで、この料理の本来の表記「木樨肉 ("sweet osmanthus pork、キンモクセイ豚")」をしようとして、急いでいたか、あるいは中国語のタイプライターの問題でメニュー上に「木須肉 ("wood whiskers pork"木製ヒゲ豚) 」と表記してしまった可能性はありうる。単に同音異義語を表記してしまったという可能性もある。

Wikiのこのエントリは Moo shu pork となってますが、説明の最後尾でポーク以外の食材も用いられ、ビーフ、チキン、エビ、豆腐の場合はそれぞれ moo shu beef、moo shu chicken、moo shu shrimp、moo shu tofu、と呼ぶと書いてあります。筆者が良く行った Rockville, MD の四川料理の店でもそのようになっていて、メニューの名前は単に「木須」と書いてあるだけで、その上で match with the meat of your choice と書いてあるわけです。「宮保」とか「湖南」などもその調子です。宮保はピーナツかカシューナッツと花椒を使った四川料理で、これの主タンパクとして何をチョイスするかという話ですから、木須も上で書いたようなパンケーキ付きの料理で、タンパク源をどれにするかという話だと思っていました。要するに筆者はこういう皿・レシピあるいはサービングのことを「木須」と言うのだと思っていたのです。もっと言うと、これについてくるパンケーキのことを木須というのだと思っていたのです。

ですから、「木須肉」という表現を見たときは??? と思いました。まず、日本にも木須というものがあることに驚いたわけですが、肉の種類を明記せずに単に「肉」? まあ確かに日本では珍しくないことですね。「肉じゃが」の肉は牛?豚?

ウィキペディアによると

肉じゃが(にくじゃが)は、日本料理のひとつである。牛肉(地方によっては豚肉)、じゃがいも、玉ねぎ、糸こんにゃくなどを醤油、砂糖、みりんで甘煮にしたもの。肉は一般的に牛肉を使うが、東日本では豚肉を使うことが多い。好みによっては鶏肉も使われる。

だそうで、なるほど。何でもアリですか。では木須肉は? 出てきたものはこんなものでした。

2011112511590000

肉の種類は、豚肉でした。ある意味当然ですね。とすると moo shu pork です。が、ここは日本で、しかも定食ですから、ごらんのとおりパンケーキがついているわけではなく、炊いたご飯とおしんこ、それに中華屋さんなのに味噌汁がついてました。それと、そもそもこのお店に来たのは中華丼を食べようとして来たのでしたが、冒頭に書いたとおりまさに中華丼の餡に良く似たものが出てきたわけです。これが moo shu? 一体パンケーキとどんな関係が??? と理解に苦しんだ結果、筆者の誤解に気づいたという次第です。パンケーキが moo shu なのではなく、パンケーキに包む中身が moo shu だったわけでした。そして、アメリカの moo shu は片栗粉で餡状にしないけれども日本の木須肉は片栗粉でトロミをつけるという違いもあります。

さて日本では木須肉、筆者が知らなかっただけで、実は良く知られたメニューなのか? と思ってググってみました。グーグルでは結構な数がヒットしましたので、筆者が知らなかっただけ、というのに近いようです。でもクックパッドでは 10 件しかヒットしませんのでそうでもないのかも知れません。また、グーグルでヒットしたもののうち、中国で食べた経験を記したものも結構あったようですので、日本で広くメニューに掲載されているというほどの知名度でもなさそうです。

今日もまた新たな発見が。

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2011年11月17日 (木)

Shungiku

昨晩、家でこれに似たものを食べました。

サクサク♪エビと春菊のかき揚げ

このレシピは生のエビを使っていますが、妻は乾燥サクラエビを用いていました。実にシンプルな料理ですが、実に良く出来ていました。何よりも驚いたのが、春菊の苦さが殆ど感じられなかったことです。しかし全く感じられないのではなく、ほのかに感じられる程度には残っていて、全体の風味が非常に良くバランスされており、良く出来た herbal cuisine と言えました。春菊のかき揚げではありますが西洋ハーブに通ずる香りにも感じられ、また実にパリパリに仕上がっていたので口の中で粉々になると青海苔のフレーバーにも通ずるものがあったのがまた不思議でした。

一方、翌日、同じバッチの春菊を鳥むねに挟み込んでカツにしたのですが、これがまあ苦いこと。こんな苦い春菊は経験したことがないというほどの苦さ。

同じ春菊でこれほどに苦さが異なるのは、食べる側のコンディションや、他のものとの食べ合わせもあるでしょうが、基本的には調理法が大きく影響しているものと思われます。これまでの経験では、最も苦くない食べ方は、意外なことに「生」です。前のエントリで、筆者は2000年頃韓国と取引をしていたと書きましたが、その前任者から教えて貰ったレシピがあります。

韓国風春菊サラダ

[材料]
春菊 1パック
ゴマ油 大さじ2
醤油 大さじ1
韓国唐辛子 1本
白ゴマ 大さじ1(好きなだけ)
黒ゴマ 大さじ1(好きなだけ)

[作り方]
1. 春菊は葉のみを茎からちぎり取り、水で良く洗う(茎は捨てる)
2. 韓国唐辛子はハサミで切り開き、中の種は捨て、皮をハサミでみじん切りにする
3. ボウルにゴマ油、醤油、2. を合わせ、軽く混ぜる
4. 皿に 1. を盛り、3. をかけ、白ゴマと黒ゴマを散らす

作り方もへったくれもありません。ポイントは、茎を使わないという点と、韓国唐辛子を使うという点だけです。茎は、好きなら使ったって結構ですが、唐辛子は鷹の爪だと辛すぎるでしょう。ちなみに上の材料、何人分か書いてありませんが、教えてくれた「前任者」によると、「一人で1パックイケるぜ」と言っていました。筆者はそれを聞いて、「まさか、そんな、バカな」と思いましたが、実際イケます。まあウチではこれを2人分と考えてますけれども。そして何より驚いたのが、苦くないことでした。いや全く苦くないわけではないのですが、適度に気持ちいいほろ苦さで、だからこそ「一人で1パックイケる」のです。

クックパッドを見てみても、生のままサラダで使うレシピは実に多く、上に似たレシピは結構多く見受けられます。そして皆さん苦くありませんよ、と書いてます。やっぱり生の春菊は苦くないもののようです。

しかし、筆者は鍋に入れた春菊はあまり好きではありません。鍋の具で出て来ても、まず手をつけません。熱をかけると苦くなるように思われます。春菊の苦味について、こんな質問がありました。

春菊は茹でた方が苦味がきえますか?

これに対するベストアンサーが、

春菊などの苦味はポリフェノールと言われる成分で抗酸化作用やアンチエイジングなど体に良い成分です。ポリフェノールはほとんどが水溶性で茹でれば苦味は取れますが春菊の持ち味までなくなってしまいます。野菜は食べやすいように改良されていますのである程度の苦味は我慢して食べるようにしたほうが良いですね。

ということなのですが、筆者としては同意できる部分と同意しかねる部分とがあります。そもそも春菊の苦味成分が何であるか、散々ネット上で検索しましたが、なかなか分かりません。上のようにポリフェノールという話もありますが、ポリフェノールの中でもサポニンであるとか、さらにその中のラクチュコピクリンであるとか、しかしこのラクチュコピクリンは春菊ではなくてレタスの苦味成分らしかったり、一方春菊を茹でると出てくるアクやエグ味の成分はシュウ酸やアルカロイド、タンニンなどという話もあり、それはそれでウソじゃないでしょうけれどあの苦味はシュウ酸の味じゃありませんし、アルカロイドやタンニンと言ったってそりゃ化合物群の名前であって特定の化合物の名前じゃありません。まあ、ポリフェノールと言っておけば相当広い概念ですから間違いないかも知れませんが、ポリフェノールが押しなべてあれだけ苦いかというとそうとも言い切れないと思うのです。

で、同意しかねるのもう1点は「茹でれば取れる」という点です。確かに流出すればなくなる道理ではありますが、水溶性だからと言って簡単に流出するとは限らないという点と、温度変化を考慮に入れていないという点です。上で筆者は「春菊は熱をかけると苦くなるように思う」と言っていますが、これは、言い換えると「春菊の苦味成分は加熱によって「苦味の比活性」が上昇する」ということになります。これが本当かどうか全く分かりませんが、本当だとすると、仮に比活性が倍になれば、成分が半分流出しても春菊単位重量あたりの苦さは同じということになります。

…と思っていたのですが、昨晩のかき揚げはどう考えればいいのでしょうか。170℃程度で 30秒程度揚げていますが、殆ど苦味が感じられませんでした。生と同程度です。サッと処理したので、成分が温度変化するに至らなかったということなのでしょうか。それとも高温の油と直接触れることに意味があったのか? だとすると苦くなるには熱水と反応する必要があるのでしょうか?

一方今日のはさみ揚げの苦さはまたどう考えればいいでしょうか。はさみ揚げを揚げている途中の深部温は不明ですが 100℃前後と仮定します。周囲は油ではなく肉汁でしょうから概ね鍋の中の春菊に近い状態と思われます。が、鍋の中の春菊と決定的に違うのは、周囲の水分量です。鍋ならばダシ中に溶け出す苦味成分が、肉汁中に溶け出すことになるわけですが、その肉汁は鍋一杯に散逸することなくはさみ揚げの内部に留まったままです。上で書いたように苦味活性が高くなるかどうかは不明ですが、仮にそうだとすれば、ただでさえ苦くなった春菊が、成分が散逸することなく周囲の肉汁ととともに保存される… これが非常に苦かった理由でしょうか?

どなたか研究してくれませんか…?

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